「#35」
8月20日の喫茶店「無銘」では…
元フィナーレだと告白したマスターが話し出した。
「まず、そこにいる美優希さんは俺の一人娘だ…
同じフィナーレにいたサラって女性との間に生まれた子供だ…
しかし、俺は記憶喪失で美優希のことを忘れてしまっている。
他の記憶は…大体、覚えているんだが…」
「美優希ちゃんがマスターの…」
秀一は…驚いたように美優希を見つめる。
「美優希ちゃん…」
真夜も美優希を見つめていた。
「……………です…」
気まずそうに美優希が頷いた。
マスターは続ける。
「これは…美優希が生まれた、ちょうど16年前のことだ…
雪乃さんから聞いた話も多少、交えて話すぞ…」
目蓋をそっと閉じて、ゆっくりゆっくり思い出しながらマスターが語り始める。
長い長い昔話を…
……………………………
……………………
………………
…………
……
…
オフィスのような室内でデスクトップのパソコンの画面を見つめているのは…
佐藤寿雄だった。
「うーん、うーん…」
「何をしているのですか…シュガー?」
そう言って、声をかけたのはアンナだった。
「おう、アンナか…トレーニング終わったのか?
何してるかって…にらめっこよPDFとな、五百川のシッポをな…捕まえる為にね…
果てしない…にらめっこしてんの…」
佐藤は溜め息をついた。
画面を覗く、ドロシー…
「にらめっこ…です…」
「あぁ、邪魔すんな…ドロシー、向こう行ってろ。
一応、表の顔はフリーのジャーナリストだ…
地道にコツコツやんのよ…ふぅ…」
「手伝ってもいいですか?」
メアリーが声をかける。
「私もやります…」
アンナも申し出る。
「お、エクセル使えるか?
打ち込む数字は絶対にミスんなよ、マジで数百ページはあるから果てしないぞ…」
佐藤の言葉に永遠子は…
「こんなの私には無理だ、特訓してくるよ…」
「数字…眠くなる………です………」
ドロシーは…あくびをひとつ…
すごく眠そうにしていた。
永遠子はドロシーを小脇に抱えて部屋をそそくさと出て行った。
「あのシュガー…こっちの書類はどうしますか?」
アンナが佐藤に声をかける。
「どのエクセルに入力したらいいですか?」
メアリーも声をかけた。
「ん、あぁ…いや、そっちは公文書だ…
NPOを巻き込んで夕張市の広報に取材依頼出したが案の定ダメだった…
なんだかんだで…ようやっと手に入れたのが…それだ。
当たり障りの無い情報しか出てこないわけさ…
骨折り損のくたびれもうけなわけなのさ。」
うーんと伸びをする佐藤。
「スパイって案外…地味なんですね…」
アンナは独り言のように呟く…
「そりゃあ…スパイ映画みたいとは違うのよ。」
メアリーはキーボードをカタカタと入力しながら…
「ドンパチやってる派手なアクション満載って訳にはいかないさ、ジャーナリストも同じさ…
泥臭い仕事ばかりさ…
ま、それでいいんだ…」
佐藤は再び、キーボードをカタカタと…
「あ、あの…情報が必要なら…
私達で聞き込みします。
どこまで出来るかは分かりませんが…」
アンナは…佐藤を真剣に見つめる。
「アンナ、聞き込むって…エターナルのことを…⁉︎」
メアリーはキーボードを入力する手を止めて…アンナを見つめた。
「確かに…やり方は泥臭くて嫌いじゃないが…
藪蛇にならなきゃいいんだが…」
佐藤は…嬉しさ半分の困った表情で頭をポリポリと掻いた。
「ヘビですか?」
…とアンナ。
「そう、ヘビーなヘビが出てこないことを祈るだけだな…」
佐藤はニコリと微笑んだ。
「笑い事に出来ないですわよ…」
メアリーに冗談はわからないようだった。
………………翌日……
ガーディアンズのメンバー…
メアリー、アンナ、ドロシー、永遠子の4人は…
北海道勇払郡占冠村(ゆうふつぐんしむかっぷむら)のトマムという地区があるところにあるリゾート施設を併設したホテルのスイートルームにいた。
テーブルを囲むように配置されているソファーに座って…
「エターナルや愛澤の息のかかっている人間のいない…
この香山のおじいさまのホテルで作戦会議を始めます。」
…とメアリー。
「まず、ここは夕張から東側の少し離れた場所にあります。」
アンナはテーブルに広げた地図を指差して…
「セーラー服…です…」
ドロシーは…無理矢理、永遠子に着せられたセーラー服をグイグイと引っ張って、アンナに見せた。
「そのセーラー服は…修学旅行で来た学生として振る舞ってもらう為のアイテムです。
自由学習の為にエターナルのことを調べていることにします。」
…とアンナ。
「…で、何を聞いたら良いんだ。」
…と永遠子。
「聞き込みする場所と内容は…さっき渡したメモを読んで…」
アンナは永遠子とドロシーを見つめた。
「それから…もしもの時には、すぐに退散すること、約束よ‼︎」
メアリーも2人を見つめた。
「急がば回れなのよ…」
アンナは微笑んだ。
「回る…です…」
ドロシーはおどけてクルクル回ってみせた。
その時…メアリーの携帯電話に連絡を知らせる着信音が…‼︎
背面の液晶表示にシュガーからの着信だと明滅する。
「シュガーからだわ…」
メアリーは二つ折りの携帯電話を広げてスピーカー通話に切り替えてテーブルに置いた。
「もしもし…メアリー聞こえてるか?」
「はい、聞こえてます、今…ホテルの部屋で作戦会議してました。」
…とメアリー。
「お、スピーカーにしてるのか?
じゃ、皆に忠告だ…
もしヤバイと思ったら、そこの香山のおじいさんのホテルに退避しろ…
移動車も香山の運転手がいるから安心しろ。」
「国の管理下に置かれてからのことを調べていく…で良いですか?」
…とメアリー。
「そうだ、どう考えても財政再建が決まる前から…例の施設の建設は始まっていた、税金ジャブジャブだ…
どこまで真相に迫れるかはわからない。
ま、噂くらいなら聞けるかもしれない…」
…と佐藤。
「神隠しの噂も…」
…とアンナ。
「無茶すんな、万が一にRX事業部の人間が出て来たら殺し合いになる。
そんなのには巻き込みたくない…」
「はい、もちろんです…
あと、聞き込みする場所ですが…」
…と佐藤の言葉に返答し、会話を続けるメアリー。
「メール見た、道の駅のメロードはJRの夕張駅に隣接してるし、修学旅行の学生もたくさんいる…
他は…屋台村とキネマ街道くらいか?」
…佐藤の言葉に。
「あのさ、ついでに夕張メロンのソフトクリームとカレー蕎麦っての食べて、そんで…ぱんじゅうっても食べてくるぜ‼︎」
…と永遠子はワクワクしていた。
「ジュルリ…です…」
ドロシーはよだれが止まらない。
「あはは、そりゃ良い修学旅行だな‼︎」
佐藤は腹を抱えて笑っていた。
アンナはシリアスな雰囲気がぶち壊されたのを頬を膨らませて感情を表していた。
「それじゃ、ガーディアンズの初任務よろしく頼むぞ…皆‼︎
じゃあな、あはは…」
…と佐藤は通話を切った。
「ありがとな、皆…」
佐藤は頼もしくも騒がしい彼女達にとって良い未来の為に頑張らないといけないと改めて思い直した。
「今の電話…ガーディアンズの初任務か…」
鼻毛が佐藤に声をかける。
「そうだ…
それにしても…あの香山のおじいさんって何者なんだ…
雪乃さんがノーネームの結成を知らせると案内してくれた…
ここ…ムーンライトガーデン(月光の庭)とか言う秘密基地…
マジで、どっかと戦争する気だったのか?」
…と佐藤の言葉に。
「おじいさまは星の妖精による魂の覚醒が…いずれ訪れる、その為に必要となるだろうって…」
…と雪乃は設備の凄さに驚いていた。
「あー、なんだっけ…サグジスタンのなんとか教みたいだな…」
佐藤は、昔読んだ…ニュースの記事を思い出しながら話した。
「スターダストガーデン(星降る庭)には、その妖精と友達だという子供達がたくさんいるからな…
私にはイマジナリーフレンドの類かと思っていたが違うのかもしれんな…」
…と鼻毛は、髭を撫でる。
「ま、使えるモンは使わせてもらおうぜ‼︎」
そんな佐藤の背中に…
「行くのか、夕張に…」
鼻毛は心配そうに声をかけた。
「俺より先に五百川の元秘書や元事務方、元担当弁護士に接触してる記者の丸井ってのがいるかもしれない。
しかも、その丸井ってのが取材した後に…そいつら皆、殺されてる…
偶然にしちゃ、見過ごせないレベルだ。
やり方が素人丸出し…
フィナーレの仕事じゃない…
この丸井ってのにも興味あるわけよ…」
「シュガー…
この間の五百川の裏金の追及での…ぶら下がりや出待ち…
そろそろ忖度の対象にされかねないぞ‼︎」
鼻毛は佐藤を真剣な表情で見つめた。
「政治家先生達の十八番の事務方のミスで修正申告しましたとさ…
俺の時間返せ、あんちくしょうめ‼︎」
部屋を出て行く佐藤の背中に、無事でありますようにと祈るしか出来ない所在なさげな雪乃がいた。
8月20日の喫茶店「無銘」では…
元フィナーレだと告白したマスターが話し出した。
「まず、そこにいる美優希さんは俺の一人娘だ…
同じフィナーレにいたサラって女性との間に生まれた子供だ…
しかし、俺は記憶喪失で美優希のことを忘れてしまっている。
他の記憶は…大体、覚えているんだが…」
「美優希ちゃんがマスターの…」
秀一は…驚いたように美優希を見つめる。
「美優希ちゃん…」
真夜も美優希を見つめていた。
「……………です…」
気まずそうに美優希が頷いた。
マスターは続ける。
「これは…美優希が生まれた、ちょうど16年前のことだ…
雪乃さんから聞いた話も多少、交えて話すぞ…」
目蓋をそっと閉じて、ゆっくりゆっくり思い出しながらマスターが語り始める。
長い長い昔話を…
……………………………
……………………
………………
…………
……
…
オフィスのような室内でデスクトップのパソコンの画面を見つめているのは…
佐藤寿雄だった。
「うーん、うーん…」
「何をしているのですか…シュガー?」
そう言って、声をかけたのはアンナだった。
「おう、アンナか…トレーニング終わったのか?
何してるかって…にらめっこよPDFとな、五百川のシッポをな…捕まえる為にね…
果てしない…にらめっこしてんの…」
佐藤は溜め息をついた。
画面を覗く、ドロシー…
「にらめっこ…です…」
「あぁ、邪魔すんな…ドロシー、向こう行ってろ。
一応、表の顔はフリーのジャーナリストだ…
地道にコツコツやんのよ…ふぅ…」
「手伝ってもいいですか?」
メアリーが声をかける。
「私もやります…」
アンナも申し出る。
「お、エクセル使えるか?
打ち込む数字は絶対にミスんなよ、マジで数百ページはあるから果てしないぞ…」
佐藤の言葉に永遠子は…
「こんなの私には無理だ、特訓してくるよ…」
「数字…眠くなる………です………」
ドロシーは…あくびをひとつ…
すごく眠そうにしていた。
永遠子はドロシーを小脇に抱えて部屋をそそくさと出て行った。
「あのシュガー…こっちの書類はどうしますか?」
アンナが佐藤に声をかける。
「どのエクセルに入力したらいいですか?」
メアリーも声をかけた。
「ん、あぁ…いや、そっちは公文書だ…
NPOを巻き込んで夕張市の広報に取材依頼出したが案の定ダメだった…
なんだかんだで…ようやっと手に入れたのが…それだ。
当たり障りの無い情報しか出てこないわけさ…
骨折り損のくたびれもうけなわけなのさ。」
うーんと伸びをする佐藤。
「スパイって案外…地味なんですね…」
アンナは独り言のように呟く…
「そりゃあ…スパイ映画みたいとは違うのよ。」
メアリーはキーボードをカタカタと入力しながら…
「ドンパチやってる派手なアクション満載って訳にはいかないさ、ジャーナリストも同じさ…
泥臭い仕事ばかりさ…
ま、それでいいんだ…」
佐藤は再び、キーボードをカタカタと…
「あ、あの…情報が必要なら…
私達で聞き込みします。
どこまで出来るかは分かりませんが…」
アンナは…佐藤を真剣に見つめる。
「アンナ、聞き込むって…エターナルのことを…⁉︎」
メアリーはキーボードを入力する手を止めて…アンナを見つめた。
「確かに…やり方は泥臭くて嫌いじゃないが…
藪蛇にならなきゃいいんだが…」
佐藤は…嬉しさ半分の困った表情で頭をポリポリと掻いた。
「ヘビですか?」
…とアンナ。
「そう、ヘビーなヘビが出てこないことを祈るだけだな…」
佐藤はニコリと微笑んだ。
「笑い事に出来ないですわよ…」
メアリーに冗談はわからないようだった。
………………翌日……
ガーディアンズのメンバー…
メアリー、アンナ、ドロシー、永遠子の4人は…
北海道勇払郡占冠村(ゆうふつぐんしむかっぷむら)のトマムという地区があるところにあるリゾート施設を併設したホテルのスイートルームにいた。
テーブルを囲むように配置されているソファーに座って…
「エターナルや愛澤の息のかかっている人間のいない…
この香山のおじいさまのホテルで作戦会議を始めます。」
…とメアリー。
「まず、ここは夕張から東側の少し離れた場所にあります。」
アンナはテーブルに広げた地図を指差して…
「セーラー服…です…」
ドロシーは…無理矢理、永遠子に着せられたセーラー服をグイグイと引っ張って、アンナに見せた。
「そのセーラー服は…修学旅行で来た学生として振る舞ってもらう為のアイテムです。
自由学習の為にエターナルのことを調べていることにします。」
…とアンナ。
「…で、何を聞いたら良いんだ。」
…と永遠子。
「聞き込みする場所と内容は…さっき渡したメモを読んで…」
アンナは永遠子とドロシーを見つめた。
「それから…もしもの時には、すぐに退散すること、約束よ‼︎」
メアリーも2人を見つめた。
「急がば回れなのよ…」
アンナは微笑んだ。
「回る…です…」
ドロシーはおどけてクルクル回ってみせた。
その時…メアリーの携帯電話に連絡を知らせる着信音が…‼︎
背面の液晶表示にシュガーからの着信だと明滅する。
「シュガーからだわ…」
メアリーは二つ折りの携帯電話を広げてスピーカー通話に切り替えてテーブルに置いた。
「もしもし…メアリー聞こえてるか?」
「はい、聞こえてます、今…ホテルの部屋で作戦会議してました。」
…とメアリー。
「お、スピーカーにしてるのか?
じゃ、皆に忠告だ…
もしヤバイと思ったら、そこの香山のおじいさんのホテルに退避しろ…
移動車も香山の運転手がいるから安心しろ。」
「国の管理下に置かれてからのことを調べていく…で良いですか?」
…とメアリー。
「そうだ、どう考えても財政再建が決まる前から…例の施設の建設は始まっていた、税金ジャブジャブだ…
どこまで真相に迫れるかはわからない。
ま、噂くらいなら聞けるかもしれない…」
…と佐藤。
「神隠しの噂も…」
…とアンナ。
「無茶すんな、万が一にRX事業部の人間が出て来たら殺し合いになる。
そんなのには巻き込みたくない…」
「はい、もちろんです…
あと、聞き込みする場所ですが…」
…と佐藤の言葉に返答し、会話を続けるメアリー。
「メール見た、道の駅のメロードはJRの夕張駅に隣接してるし、修学旅行の学生もたくさんいる…
他は…屋台村とキネマ街道くらいか?」
…佐藤の言葉に。
「あのさ、ついでに夕張メロンのソフトクリームとカレー蕎麦っての食べて、そんで…ぱんじゅうっても食べてくるぜ‼︎」
…と永遠子はワクワクしていた。
「ジュルリ…です…」
ドロシーはよだれが止まらない。
「あはは、そりゃ良い修学旅行だな‼︎」
佐藤は腹を抱えて笑っていた。
アンナはシリアスな雰囲気がぶち壊されたのを頬を膨らませて感情を表していた。
「それじゃ、ガーディアンズの初任務よろしく頼むぞ…皆‼︎
じゃあな、あはは…」
…と佐藤は通話を切った。
「ありがとな、皆…」
佐藤は頼もしくも騒がしい彼女達にとって良い未来の為に頑張らないといけないと改めて思い直した。
「今の電話…ガーディアンズの初任務か…」
鼻毛が佐藤に声をかける。
「そうだ…
それにしても…あの香山のおじいさんって何者なんだ…
雪乃さんがノーネームの結成を知らせると案内してくれた…
ここ…ムーンライトガーデン(月光の庭)とか言う秘密基地…
マジで、どっかと戦争する気だったのか?」
…と佐藤の言葉に。
「おじいさまは星の妖精による魂の覚醒が…いずれ訪れる、その為に必要となるだろうって…」
…と雪乃は設備の凄さに驚いていた。
「あー、なんだっけ…サグジスタンのなんとか教みたいだな…」
佐藤は、昔読んだ…ニュースの記事を思い出しながら話した。
「スターダストガーデン(星降る庭)には、その妖精と友達だという子供達がたくさんいるからな…
私にはイマジナリーフレンドの類かと思っていたが違うのかもしれんな…」
…と鼻毛は、髭を撫でる。
「ま、使えるモンは使わせてもらおうぜ‼︎」
そんな佐藤の背中に…
「行くのか、夕張に…」
鼻毛は心配そうに声をかけた。
「俺より先に五百川の元秘書や元事務方、元担当弁護士に接触してる記者の丸井ってのがいるかもしれない。
しかも、その丸井ってのが取材した後に…そいつら皆、殺されてる…
偶然にしちゃ、見過ごせないレベルだ。
やり方が素人丸出し…
フィナーレの仕事じゃない…
この丸井ってのにも興味あるわけよ…」
「シュガー…
この間の五百川の裏金の追及での…ぶら下がりや出待ち…
そろそろ忖度の対象にされかねないぞ‼︎」
鼻毛は佐藤を真剣な表情で見つめた。
「政治家先生達の十八番の事務方のミスで修正申告しましたとさ…
俺の時間返せ、あんちくしょうめ‼︎」
部屋を出て行く佐藤の背中に、無事でありますようにと祈るしか出来ない所在なさげな雪乃がいた。


