「#32」


庭の枯山水に青紅葉が揺れる中で…

雪乃の回想は…まだ続いている。

………………

…………

……




あの茶室での会談から数週間後…

香山財団の孤児院、太陽の庭にある応接室にて…

窓から見える庭園には、ひまわりが揺れていた。

佐藤は呆れ顔をしていた。

「なんだって…

お嬢ちゃん、どういうことか…

もう一度、説明してくれ…」

「目の前にいる女子中高生達4人が戦力だと…

そういうことですかね。」

鼻毛は白髭を困り顔で撫で上げた。


雪乃は…

凛とした表情のままで…

「彼女達のご両親やご家族はRX事業部の手によって殺され…

生き残ったもの達ですの…」

鼻毛は言葉に詰まった様子で静かに話し出す。

「俺はここにいて………いいのか?」

雪乃は続ける。

「もちろんです、全て伝えてあります…

それに…今のあなたはミスターノーズ様ですものね。」

青い目をした少女…

髪は肩くらいまでで愛澤学園の制服を着ている。

高校生くらいだろうか。

肌は白くヨーロッパ系のハーフに見えた。

「はじめまして…ミスターノーズ様とシュガー様…

私はアンナ…香山アンナと名乗らせていただきます。

8年前のセスナ機の墜落事故を覚えておいでですか?

海外のジャーナリストなどが8名全員亡くなった事故です。」

感情を無くしたロボットみたいに冷静で冷徹な声色だった。

「セスナ……沖縄の離島の取材帰りだったそうだな…」

鼻毛は……五百川の顔を想い出した。


長身でショートヘアーの運動部のような快活そうな少女が怒りを露わにした。

応接室のソファーから飛び掛からんばかりに立ち上がって…

「お前が殺したのか、父さんを‼︎」

怒りで肩が震えていた。

「永遠子(とわこ)やめなさい‼︎

…あと、ドロシーも睨まないで‼︎」

ドロシーはポツリと…

「パパ……」

その先の言葉は聞き取れない。

他の少女達にそう言って頭を下げた一番年上そうな彼女が続ける。

「私はガーディアンズのリーダーとなる香山メアリーと申します。

以後、どうぞお見知りおきくださいませ…」

「まさかここまで子供だとは思わなかった…

レディスノー…何をさせたいんだ、オレ達に…」

佐藤は厄介そうに、頭をポリポリ掻いた。

いつでも対処出来るようにだろうか、佐藤はソファーに浅く腰掛けていた。

癖みたいに染みついた何かを感じさせた。

メアリーは立ち上がり、深々と頭を下げて…

「私達に戦える術を…守護る力をお教えいただきたく…」

遮るように鼻毛…

「復讐か⁉︎」

その言葉に雪乃は反応する。

「違います、守護る力ですの‼︎」

鼻毛と佐藤は、ほぼ同時に…

「まもる⁉︎」

佐藤は続ける。

「まもる、まもるって、いったい何をまもるってんだ⁉︎」

「この国の希望の光となり得る者達の命ですわ‼︎」

真っ直ぐ、ただ真っ直ぐに目指す未来を見つめて…

雪乃は力強く宣言した。


「言葉の意味は分かりませんが…貴女の熱意には人を動かす力がある…

その若さで凄まじい胆力、この組織のボスに相応しいですな、レディスノー…」

鼻毛は雪乃に感嘆の声を漏らした。

「ちょい待ち、ちょい待ち、勝手に進めんなって…

話が見えないっての、ちゃんと噛み砕いて説明しろ、レディスノーちゃん‼︎」


雪乃は溜め息をひとつ。

「いざって時のために…そのために……」

「この娘さん達にガーディアンズに見合う力を…そういうことかね。」

鼻毛は思案中だと白髭を撫で下ろす。

「諜報…隠密…護身術……あとは武器の扱い方…一人前になるまで時間はかけられないな…」

鼻毛の言葉に佐藤…

「…ん、なら、オレの出番だな、グリーンベレー仕込みのイロハを叩き込んでやるからな…

覚悟しておけよ‼︎」

少女達は立ち上がり、深々と感謝の言葉を述べた。

『ありがとうございます‼︎‼︎』

「…やるぞ、みんな」

メアリーが手を伸ばす‼︎

『オーーーーーーッ‼︎‼︎‼︎』

掛け声が応接室を揺らした。

太陽がひまわりを輝かせていた。