「#29」


金魚と清志がどくどくクイズでやり合っている時…

7月25日、永田町での1日を終えて…いつもよりも赤い空に照らされて…

紀尾井町通りを黒塗りの公用車が走り抜ける。

その車内でグラマラスな秘書が政調会長の五百川に囁くように耳打ちする。

「そうか、清志のヤツがサグジスタンに…

わかった、ありがとう。」

秘書の太ももを優しく撫で回した。

73歳で、今なお、このバイタリティー溢れる野望に目を輝かせる…

真っ白なパナマ帽にゼブラ柄のダブルのスーツ、黄色のカットシャツ、黄色のイタリア製の革靴が菜の花みたいなアクセントでマフィアのボスとみまごう着こなしであった。

この五百川という男…

叩き上げのドブ板選挙で練馬区の区議会議員に25歳で初当選。

「ジバン」も「カンバン」も「カバン」もない選挙での僅差での接戦を制した青年は自由未来党の新星として期待を超えた活躍を遂げる。

地元、練馬区に地下鉄の路線をもたらし、今も地下鉄路線の延伸事業や道路拡張や延伸での成果で地元の練馬区では絶対的な人気を誇っていた。

自宅のある石神井公園駅に急行が乗り入れるようになったのは鉄道会社の忖度ではと噂される程だ。

彼はイオカワイエローとも呼ばれる黄色のTシャツで選挙戦を戦った。

支援者が皆、黄色のTシャツで応援する様は異様な熱気を生み出していた。

マスコミはこぞって、裏金イエローだの派閥イエローだのと揶揄し、こけ落とした。

しかし…結果は、国政で連続当選11回という凄まじい成績であった。

その華麗なる政界での活躍の裏で…

愛澤誠太郎にRX事業部を作らせ…

目障りな人間は消しに消させた。

ほとんどは事故死を装った。

酔って風呂場での溺死や階段で横転して脳挫傷など…

果ては、胴上げに失敗したと見せかけての転落死なんてものまであった。

そして彼こそがエターナル誕生の黒幕のひとりであった。

清志と共に雪乃を利用しエターナルは誕生した。

「私に厄介事が降りかかってこないのならば、どうでもいいことだ。

理想的な国家がまもなく完成する…」

窓を流れる光の筋を眺めて独り言を呟く五百川だった。

サグジスタンを目指す飛行機は彼の頭上を飛んでいた。