「#25」


7月25日…

誠次が夢の中にいた頃。

同じく、夕張の施設のかがやきの森を散策する人影があった。

愛澤誠太郎と稲村雪乃の2人だった。

雪乃は歩きながら語りかける。

「この通りは白樺が綺麗ですし、向こうは桜やハナミズキ、様々な樹木や花々で彩られていますのね……」

誠太郎は2人きりなのを確認してから話し出した。

「何もかも、私のせいだ、私のせいなのだ…

雪乃さん、情け無いおいぼれの頼みだ。

申し訳ない…この国の闇を全て背負わせてしまうことになったこと。

もう後戻りは出来ない………

そして、私でさえ…もう手のつけようがなくなったのだ。」

頭を下げる誠太郎に雪乃。

「清志叔父様ですわね、それと誠次様……ですわね。」

「RX事業部は、もともとは政界と財界のスキャンダルを揉み消す為に、どうしても必要な悪として誕生した。

必要だったんだよ。」

苦虫を噛み潰したような表情の誠太郎。

雪乃は見つめる。

「鼻毛様が亡くなられてから…ですわよね。」

誠太郎の眉間の皺が怒りを表していた。

「鼻毛というリミッターが解除されてからだ、清志も誠次も暴走し出した。」

誠太郎は続ける。

「鼻毛は、あいつは、あの世界の良心そのものだった…

コロシにも美学があるヤツだった。

だからこその人望もあった。

闇の中の陽だまりみたいなヤツだったんだ。」

雪乃は尋ねた。

「その後に愛澤学園の江戸川博士とも………」

誠太郎は答えた。

「そうだ、エターナルにRX事業部を移行させた頃だ。

オゾンがエターナルに変わる直前に買収した製薬会社と製薬工場と研究施設……

その最高責任者が江戸川博士だ。

彼女は誠次と同じく頭のネジが全て飛んでいったようなヤツだった。

ジェネリック医薬品と新薬の開発、本当にそれだけだと思っていた。」

雪乃は尋ねた。

「新薬はどんな研究を……」

誠太郎は苦悶の表情だ。

「もともとは鬱病の薬だった、そこで出来損ないの試作品の失敗作が2つ……

その両方ともが違うアルコール製剤に混入してしまった。

それがきっかけだった、悪夢の発見に繋がったのだ。」

雪乃は恐々と…

「悪夢……どんな成分なのです、薬効としては………」

誠太郎…静かに目を閉じて………

「私も…詳しくは知らない、しかしアルコール度数70%以上の酒をショットグラス1杯分と2つの試作品を混ぜ合わせると合成麻薬…

ジキル&ハイドと呼ばれる悪夢の誕生だった。」

雪乃はピンときた。

「先日の新小岩の事件ですわね。」

誠太郎は、さらに続ける。

「エターナルは各官庁や省庁の天下り先だ、資金力にものを言わせてやりたい放題だ。

清志と誠次、江戸川博士に五百川先生もだ、実験材料を求めて法務大臣にも鼻薬を…

死刑囚はモルモットになっている。

エターナルの研究施設には、死刑執行のニュースが出た者から送り込まれている。

止めなければ日本が終わるのだ。」

誠太郎は頭を抱えた。

雪乃は精悍な顔つきで誠太郎に決意表明する。

それは雪乃にとって最大の戦いの幕開けでもあった。


暮れなずむ空を背にして雪乃は勇ましくみえた。

心の中の誠一郎も彼女を鼓舞していた。