「#20」
あの通り魔の事件が世間を賑わせていた頃…
7月24日…
あの夕張の施設内のとある部屋。
無機質なステンレス製の銀色の扉にはハガキサイズの表札が掛かっていた。
[RX事業部]と掲げられていた。
室内からは、あの男の声が聞こえてきた。
「進めろ、止めろ、戻せ、もう一度だ…」
忙しなく指示を出しながら、壁に映し出される動画の映像。
真夜達が新小岩で陽葵を助けられなかった…あの映像だ。
動画配信者が生中継で、ハシゴ酒をする企画で新小岩を訪れていた。
たまたま、事件の最初から最後まで撮影されていた。
もちろん現在は削除されているのだが、やはりネットの世界…
全て消してしまうのは無理な話だ。
誠次の部下の副島(そえじま)は不思議そうに尋ねた。
「さっきから何をそんなに何度も観ているんで…」
「このガキ3匹…何者、何者なんだ?」
眉間に皺を寄せる誠次。
「何者も何も偶然に居合わせた高校生くらいにしか見えないですが…」
副島は顎を撫でる。
「じゃ、このチビっ子が軍隊格闘術を実戦レベルのこんなのを何処で教わるんだ、おそらくプロだ。」
副島は…
「もし、そうだとして私達に何の関係も無いのでは?」
座っているイタリア製ソファーの肘当てをコツコツと指で弾きながら誠次は言う。
「勘だ、勘だよ…あの3匹、隈なく調べ上げろ‼︎」
「期限は?」
副島が言うや否や…
「明日だ、ボケか、ちゃんと宿題終わらせてくださいね、でないと殺しますよ‼︎」
感情の底が見えない誠次の笑顔に、副島は震え上がる。
………翌日の7月25日である。
「副島ちゃん、宿題終わらせてきましたか?」
誠次は副島の背後に回り込み、両肩を捕まえるように声をかけた。
「し、調べました。」
副島の声がうわずる。
映し出される動画を止めながら、説明する。
「こっちの止血している男子高校生の名前が『ナグモシュウイチ』です。」
誠次は頭をくしゃくしゃしながら…
「なぐも、なぐも、南雲…ん、両親の名前は?」
副島は続ける。
「父親が『ナグモリョウマ』で母親が『ナグモツキホ』です。」
誠次は、さらに頭をくしゃくしゃ。
「父親の名字、父方と母方ともにわかるか?」
随分と真剣な表情をするなと副島は思う。
「父方が『モチヅキ』で母方が『ナグモ』です。」
笑いを堪えられない誠次。
「モチヅキリョウマ、望月龍馬…兄貴が資金援助して助けた弟ちゃんじゃねぇかッ‼︎ クソが!」
捲し立てる誠次。
「母親の旧姓は?」
副島は…
「あの…『イナムラ』です。」
さらに笑う誠次。
「雪乃の妹ちゃんじゃねぇか‼︎」
あまりの事に誠次はワクワクしてくる。
「…では、続けます、あの黒パーカーの男を制圧した小柄な女子高校生は『マスダミユキ』と、どんなに調べても戸籍らしきものもなく情報はこれくらいでした…何かしらに守られているみたいでして。」
副島は叱責されるのを覚悟して話した。
誠次は…
「マスダ…マスダ……フィナーレのスナイパーマスターか?」
誠次の高笑いは止まらない。
「ん、まだ、なんかあんだろ、言え。」
誠次の言葉は当たっていた。
「あ、はい、生まれて…すぐに雪乃さんに預けられています。」
誠次は、笑いが止まらないとばかりに頭を抱える。
「そうか、ビンゴだ、マスターの娘だ…間違いねぇ、サラのヤツを腑抜けにしやがった…元凶だ。」
副島は何がおかしいのか、さっぱりだ。
「刺された高校生を抱きしめている女子高校生が『クロセマヨ』という…」
副島の言葉を遮る誠次。
「兄貴の娘じゃねぇか、死に損ないの…いや、殺し損ないのか。」
誠次は手を叩いて叫ぶ。
「俺が地獄に送ってやったヤツらの血族が揃いも揃って邪魔しようってのか、そうはさせんぞ、忌々しい‼︎」
副島は誠次へ…
「こ、高校生に邪魔なんか出来ますかね……」
あんな子供達に、何を恐れているのか不思議な副島。
副島をキッと一瞥する誠次。
「馬鹿野郎‼︎ エターナルの副社長の稲村雪乃は18歳で、今のエターナルの誕生の立役者のひとりなんだぞ‼︎」
あまりの迫力に副島は…
「そ、そうなんで………」
「ジキル&ハイドは、こんなに早々に警察に押収されるはずじゃなかったんだぞ、もっともっと派手にヤラしてくれるシロモノなんだ‼︎」
握り締めた拳で副島を殴る誠次。
「どうしますか?」
よろけながら、副島は問いかける。
「泳がせろ、もう少し様子見だ、それにだ…秀一の両親は外交官で稲村総理の特務で何かしらの任務に当たっていると…そう言う話なんだな。」
副島は赤べこみたいにうなづく。
「……で、この3匹揃って『無銘』と言う喫茶店でバイトしていると…」
副島の赤べこのスピードが上がる。
「まだ調査を続けます…」
「無視出来ないくらいに邪魔になるのなら、すぐに消せ‼︎
雪乃の後ろ盾があるのなら、多少は乱暴にやっていい、うまく殺れ。」
誠次は頭をくしゃくしゃしながら…
「オレの予感って、どうにも当たっちゃうのよね。
おあつらえむけと言うのか、何と言うのか、何の因果だよ‼︎
なぁ、兄貴ッ‼︎」
誠次はジャケットのポケットからジキル&ハイドを取り出す。
ソファーの横のサイドテーブルに伏せていたショットグラスにウォッカを注ぎ入れる。
赤と青のラムネをひと粒づつ、口に放り込む。
追いかけるようにショットグラスをあおる。
……………………………‼︎
カタカタと誠次の身体が震え出す。
「ッ…んんんッ、あぁぁぁ……
ふぅ、キマるぜ、こりゃ最高だ、最高だぜー…」
窓から見える血のような夕暮れ空に拍手喝采する誠次。
副島や他の部下達は、その光景に震え上がる。
何故なら、誠次の足元にはヘマをしたと叱責された部下の数名が死体となって床に転がっていたからである。
あの通り魔の事件が世間を賑わせていた頃…
7月24日…
あの夕張の施設内のとある部屋。
無機質なステンレス製の銀色の扉にはハガキサイズの表札が掛かっていた。
[RX事業部]と掲げられていた。
室内からは、あの男の声が聞こえてきた。
「進めろ、止めろ、戻せ、もう一度だ…」
忙しなく指示を出しながら、壁に映し出される動画の映像。
真夜達が新小岩で陽葵を助けられなかった…あの映像だ。
動画配信者が生中継で、ハシゴ酒をする企画で新小岩を訪れていた。
たまたま、事件の最初から最後まで撮影されていた。
もちろん現在は削除されているのだが、やはりネットの世界…
全て消してしまうのは無理な話だ。
誠次の部下の副島(そえじま)は不思議そうに尋ねた。
「さっきから何をそんなに何度も観ているんで…」
「このガキ3匹…何者、何者なんだ?」
眉間に皺を寄せる誠次。
「何者も何も偶然に居合わせた高校生くらいにしか見えないですが…」
副島は顎を撫でる。
「じゃ、このチビっ子が軍隊格闘術を実戦レベルのこんなのを何処で教わるんだ、おそらくプロだ。」
副島は…
「もし、そうだとして私達に何の関係も無いのでは?」
座っているイタリア製ソファーの肘当てをコツコツと指で弾きながら誠次は言う。
「勘だ、勘だよ…あの3匹、隈なく調べ上げろ‼︎」
「期限は?」
副島が言うや否や…
「明日だ、ボケか、ちゃんと宿題終わらせてくださいね、でないと殺しますよ‼︎」
感情の底が見えない誠次の笑顔に、副島は震え上がる。
………翌日の7月25日である。
「副島ちゃん、宿題終わらせてきましたか?」
誠次は副島の背後に回り込み、両肩を捕まえるように声をかけた。
「し、調べました。」
副島の声がうわずる。
映し出される動画を止めながら、説明する。
「こっちの止血している男子高校生の名前が『ナグモシュウイチ』です。」
誠次は頭をくしゃくしゃしながら…
「なぐも、なぐも、南雲…ん、両親の名前は?」
副島は続ける。
「父親が『ナグモリョウマ』で母親が『ナグモツキホ』です。」
誠次は、さらに頭をくしゃくしゃ。
「父親の名字、父方と母方ともにわかるか?」
随分と真剣な表情をするなと副島は思う。
「父方が『モチヅキ』で母方が『ナグモ』です。」
笑いを堪えられない誠次。
「モチヅキリョウマ、望月龍馬…兄貴が資金援助して助けた弟ちゃんじゃねぇかッ‼︎ クソが!」
捲し立てる誠次。
「母親の旧姓は?」
副島は…
「あの…『イナムラ』です。」
さらに笑う誠次。
「雪乃の妹ちゃんじゃねぇか‼︎」
あまりの事に誠次はワクワクしてくる。
「…では、続けます、あの黒パーカーの男を制圧した小柄な女子高校生は『マスダミユキ』と、どんなに調べても戸籍らしきものもなく情報はこれくらいでした…何かしらに守られているみたいでして。」
副島は叱責されるのを覚悟して話した。
誠次は…
「マスダ…マスダ……フィナーレのスナイパーマスターか?」
誠次の高笑いは止まらない。
「ん、まだ、なんかあんだろ、言え。」
誠次の言葉は当たっていた。
「あ、はい、生まれて…すぐに雪乃さんに預けられています。」
誠次は、笑いが止まらないとばかりに頭を抱える。
「そうか、ビンゴだ、マスターの娘だ…間違いねぇ、サラのヤツを腑抜けにしやがった…元凶だ。」
副島は何がおかしいのか、さっぱりだ。
「刺された高校生を抱きしめている女子高校生が『クロセマヨ』という…」
副島の言葉を遮る誠次。
「兄貴の娘じゃねぇか、死に損ないの…いや、殺し損ないのか。」
誠次は手を叩いて叫ぶ。
「俺が地獄に送ってやったヤツらの血族が揃いも揃って邪魔しようってのか、そうはさせんぞ、忌々しい‼︎」
副島は誠次へ…
「こ、高校生に邪魔なんか出来ますかね……」
あんな子供達に、何を恐れているのか不思議な副島。
副島をキッと一瞥する誠次。
「馬鹿野郎‼︎ エターナルの副社長の稲村雪乃は18歳で、今のエターナルの誕生の立役者のひとりなんだぞ‼︎」
あまりの迫力に副島は…
「そ、そうなんで………」
「ジキル&ハイドは、こんなに早々に警察に押収されるはずじゃなかったんだぞ、もっともっと派手にヤラしてくれるシロモノなんだ‼︎」
握り締めた拳で副島を殴る誠次。
「どうしますか?」
よろけながら、副島は問いかける。
「泳がせろ、もう少し様子見だ、それにだ…秀一の両親は外交官で稲村総理の特務で何かしらの任務に当たっていると…そう言う話なんだな。」
副島は赤べこみたいにうなづく。
「……で、この3匹揃って『無銘』と言う喫茶店でバイトしていると…」
副島の赤べこのスピードが上がる。
「まだ調査を続けます…」
「無視出来ないくらいに邪魔になるのなら、すぐに消せ‼︎
雪乃の後ろ盾があるのなら、多少は乱暴にやっていい、うまく殺れ。」
誠次は頭をくしゃくしゃしながら…
「オレの予感って、どうにも当たっちゃうのよね。
おあつらえむけと言うのか、何と言うのか、何の因果だよ‼︎
なぁ、兄貴ッ‼︎」
誠次はジャケットのポケットからジキル&ハイドを取り出す。
ソファーの横のサイドテーブルに伏せていたショットグラスにウォッカを注ぎ入れる。
赤と青のラムネをひと粒づつ、口に放り込む。
追いかけるようにショットグラスをあおる。
……………………………‼︎
カタカタと誠次の身体が震え出す。
「ッ…んんんッ、あぁぁぁ……
ふぅ、キマるぜ、こりゃ最高だ、最高だぜー…」
窓から見える血のような夕暮れ空に拍手喝采する誠次。
副島や他の部下達は、その光景に震え上がる。
何故なら、誠次の足元にはヘマをしたと叱責された部下の数名が死体となって床に転がっていたからである。


