「#12」
6月22日の放課後の事である。
愛澤学園のメインの校舎から1キロメートル程離れた場所にタワー棟と呼ばれている33階建てのビルがあった。
様々な科目の教授の研究室や実験室、運動部や文化部等の部室、学園の関係者用のカンファレンスルームやレセプションホールとありとあらゆるもの。
果ては温浴関連の兼ね備えたリラクゼーション施設、プレイルームにはダーツにビリアード、ボーリング、現在、存在する映像作品に書籍、テレビゲームまで…上級国民って、こういう事かと初めて目にした真夜は溜め息をついた。
そんなタワー棟はダブルデッキエレベーターを設置していた。
エレベーターのカゴが上下に重なっているような感じのものだ。
エレベーターホールも行き先階で分かれている低層階と中層階用。
中層階と高層階用、それぞれ1階は奇数階、2階は偶数階に移動出来る。
もちろん、そのエレベーターホールに入る手前にはセキュリティのゲートが設置してある。
ゲート前にはプロレスラーみたいな屈強な警備員が複数名配置されていた。
本当に警備員なのか疑問視してしまうくらいだ。
それらはタワー棟を取り囲むように設置されており特殊な強化ガラスで作られたエレベーターで…
床以外は全てガラスやアクリルで出来ている、ご丁寧に銀色に輝くマジックミラー張りの仕様であったから、真夜の溜め息は止まらない。
なんかいろんな意味でいやらしいのだ。
「悪趣味、成金丸出しじゃないか。」
秀一は真夜へ問いかける。
「そっちはVIP用の金色エレベーターの方じゃないの?」
真夜はエビフライの着ぐるみのイラストが描かれたニャフサンドの財布から学生証とセキュリティカードを兼ねた、それを取り出してみせた。
「えへへ…ブラックカードです。」
美優希が驚く。
「はわわ…です。」
「初めて役に立って良かった。」
真夜もタワー棟の中央に配置されている金色エレベーターと呼ばれている。
シングルデッキで全階のセキュリティが解除出来る学園でも数名しか持ってないカードをみせた。
警備員はいるがセキュリティゲートは無い。
警備員は一声。
「黒瀬真夜様ですね、中でパネルにカードをかざしてから行き先階のボタンを押して下さい…いってらっしゃいませ。」
他のエレベーターと違って金色のマジックミラー張り仕様であった。
「んもぅ〜…最高にダサい、ひどい…ここだけバブル弾けないままなのかよ!」
…と真夜は、溜め息混じりに呟いた。
「カンファレンスルーム貸切っておいたから、作戦会議といきましょう。」
そう宣言すると…真夜は、自分自身の整理しきれない気持ちを落ち着かせようと深呼吸をひとつ。
33階の特別室カンファレンスルームにエレベーターは到着した。
「33階全て貸し切りだから、安心して話し合い出来るわ。」
真夜は決意表明みたいに二人に話した。
「真夜って、上級国民なんだな…」
秀一が、つい漏らした一言に…
「秀一…大丈夫、人間に偉いとか、そんなの無いから得意不得意はあるから役割分担してるだけ…それがわからないから金色のエレベーターなんて作るんでしょ。」
真夜は、ちょっと怒ってるようにみえた。
「北と南、どっちの部屋を使うです?」
美優希はマイペースが過ぎた。
秀一は真夜の許可を得て美優希にも色が変わる体験の話を伝えていた。
カンファレンスルームは北側を使うことにした。
「まず、陽葵さんが…<白くなった>…ってことは、おそらくは『死』が近付いている可能性があるってことになると考えられる。」
秀一はホワイトボードにマジックで記入しながら話した。
「えと、どうやって死んでしまうかを考えないと…です…」
…と美優希。
真夜は…
「病死……事故死………事件に巻き込まれるとか………」
苦悶の表情で思案する真夜。
秀一が、ふいに言う。
「真夜、良いか…」
真夜の両手を優しく包むように握り締める。
「甘々…」と美優希が言いかけ…
「違うって‼︎」否定する秀一。
「どうだ、オレの色は変わったか真夜。」と秀一。
呆気に取られたままで真夜は…
「大丈夫、変わってないよ。」
「あくしゅ、あくしゅです。」
美優希も真夜の両手をにぎにぎする。
「うん、大丈夫、美優希ちゃんも変わってないよ。」
…と真夜。
「ん、じゃあ、とりあえず巨大地震とか災害死の線は消えたと思うぞ。」
真夜へウインクする秀一。
「静電気…」
何かに気付いたと真夜。
「バチッってなるっていう現象か!」
秀一は合点がいったと手を叩く。
「静電気で…変わる……です?」
目がはてなマークの美優希。
「トリガー…その現象の引き金になっていることは間違いなさそうだろうな。」
顎に手をかけたままで秀一は呟いた。
堂々巡りみたいな時間が不安定な気持ちを加速させる。
「どうしたらいいのかな、ねぇ…陽葵ちゃんを助けたいよ!」
真夜は秀一へ…
「オレも同じ想いだ、助けよう!」
真夜の肩を抱く秀一。
「甘々…」 美優希はポーズを構えようとする。
秀一は、その手を軽く押さえて一言。
「病死が選択肢にあるなら検査してもらえば良いだけだ、ありとあらゆる検査をしてもらう…」
「口実は陽葵ちゃんバイトしてたから新薬のデータの為とか言ってバイト代を出してやってもらおうと思うの。」
真夜は真っ直ぐだ。
「そんな検査してもらえる病院なんてあるのか?」
秀一は現実的に考える。
「なんとかなるかも…おじさま(養父)とおばさま(養母)のかかりつけの病院がエターナルなの…あそこなら…」
真夜はもじもじしながら話した。
「エターナルってエターナル総合病院か…日本の名医100に選ばれている医師ばかりのVIPしか治療しないで有名なとこじゃないか!」
秀一は真夜から出る上級国民ワードにヘロヘロだ。
「エターナル…ゆゆしき…です!」
美優希の顔つきが変わる。
「ゆゆしき、なのか?」
秀一は不思議そうに聞き返す。
「………ッ…です‼︎」
美優希は本気だ。
「りょうかいであります。」
迫力に負けて、秀一は美優希に敬礼する。
「ふたりとも…もし、何かあれば…迷わずに無銘に来る…です‼︎」
美優希は不安気だ。
「無銘…に…」
…と真夜。
鼻息荒く美優希は…
「…です‼︎」
秀一と真夜は見つめ合う…
カンファレンスルームの窓には、ひどい夕立になった大きな雨粒がバチバチと打ちつけていた。
落雷と共に降り出した豪雨に真夜は思う。
あの陽葵の白く染まった色も流してはくれないものかと思わずにはいられなかった。
6月22日の放課後の事である。
愛澤学園のメインの校舎から1キロメートル程離れた場所にタワー棟と呼ばれている33階建てのビルがあった。
様々な科目の教授の研究室や実験室、運動部や文化部等の部室、学園の関係者用のカンファレンスルームやレセプションホールとありとあらゆるもの。
果ては温浴関連の兼ね備えたリラクゼーション施設、プレイルームにはダーツにビリアード、ボーリング、現在、存在する映像作品に書籍、テレビゲームまで…上級国民って、こういう事かと初めて目にした真夜は溜め息をついた。
そんなタワー棟はダブルデッキエレベーターを設置していた。
エレベーターのカゴが上下に重なっているような感じのものだ。
エレベーターホールも行き先階で分かれている低層階と中層階用。
中層階と高層階用、それぞれ1階は奇数階、2階は偶数階に移動出来る。
もちろん、そのエレベーターホールに入る手前にはセキュリティのゲートが設置してある。
ゲート前にはプロレスラーみたいな屈強な警備員が複数名配置されていた。
本当に警備員なのか疑問視してしまうくらいだ。
それらはタワー棟を取り囲むように設置されており特殊な強化ガラスで作られたエレベーターで…
床以外は全てガラスやアクリルで出来ている、ご丁寧に銀色に輝くマジックミラー張りの仕様であったから、真夜の溜め息は止まらない。
なんかいろんな意味でいやらしいのだ。
「悪趣味、成金丸出しじゃないか。」
秀一は真夜へ問いかける。
「そっちはVIP用の金色エレベーターの方じゃないの?」
真夜はエビフライの着ぐるみのイラストが描かれたニャフサンドの財布から学生証とセキュリティカードを兼ねた、それを取り出してみせた。
「えへへ…ブラックカードです。」
美優希が驚く。
「はわわ…です。」
「初めて役に立って良かった。」
真夜もタワー棟の中央に配置されている金色エレベーターと呼ばれている。
シングルデッキで全階のセキュリティが解除出来る学園でも数名しか持ってないカードをみせた。
警備員はいるがセキュリティゲートは無い。
警備員は一声。
「黒瀬真夜様ですね、中でパネルにカードをかざしてから行き先階のボタンを押して下さい…いってらっしゃいませ。」
他のエレベーターと違って金色のマジックミラー張り仕様であった。
「んもぅ〜…最高にダサい、ひどい…ここだけバブル弾けないままなのかよ!」
…と真夜は、溜め息混じりに呟いた。
「カンファレンスルーム貸切っておいたから、作戦会議といきましょう。」
そう宣言すると…真夜は、自分自身の整理しきれない気持ちを落ち着かせようと深呼吸をひとつ。
33階の特別室カンファレンスルームにエレベーターは到着した。
「33階全て貸し切りだから、安心して話し合い出来るわ。」
真夜は決意表明みたいに二人に話した。
「真夜って、上級国民なんだな…」
秀一が、つい漏らした一言に…
「秀一…大丈夫、人間に偉いとか、そんなの無いから得意不得意はあるから役割分担してるだけ…それがわからないから金色のエレベーターなんて作るんでしょ。」
真夜は、ちょっと怒ってるようにみえた。
「北と南、どっちの部屋を使うです?」
美優希はマイペースが過ぎた。
秀一は真夜の許可を得て美優希にも色が変わる体験の話を伝えていた。
カンファレンスルームは北側を使うことにした。
「まず、陽葵さんが…<白くなった>…ってことは、おそらくは『死』が近付いている可能性があるってことになると考えられる。」
秀一はホワイトボードにマジックで記入しながら話した。
「えと、どうやって死んでしまうかを考えないと…です…」
…と美優希。
真夜は…
「病死……事故死………事件に巻き込まれるとか………」
苦悶の表情で思案する真夜。
秀一が、ふいに言う。
「真夜、良いか…」
真夜の両手を優しく包むように握り締める。
「甘々…」と美優希が言いかけ…
「違うって‼︎」否定する秀一。
「どうだ、オレの色は変わったか真夜。」と秀一。
呆気に取られたままで真夜は…
「大丈夫、変わってないよ。」
「あくしゅ、あくしゅです。」
美優希も真夜の両手をにぎにぎする。
「うん、大丈夫、美優希ちゃんも変わってないよ。」
…と真夜。
「ん、じゃあ、とりあえず巨大地震とか災害死の線は消えたと思うぞ。」
真夜へウインクする秀一。
「静電気…」
何かに気付いたと真夜。
「バチッってなるっていう現象か!」
秀一は合点がいったと手を叩く。
「静電気で…変わる……です?」
目がはてなマークの美優希。
「トリガー…その現象の引き金になっていることは間違いなさそうだろうな。」
顎に手をかけたままで秀一は呟いた。
堂々巡りみたいな時間が不安定な気持ちを加速させる。
「どうしたらいいのかな、ねぇ…陽葵ちゃんを助けたいよ!」
真夜は秀一へ…
「オレも同じ想いだ、助けよう!」
真夜の肩を抱く秀一。
「甘々…」 美優希はポーズを構えようとする。
秀一は、その手を軽く押さえて一言。
「病死が選択肢にあるなら検査してもらえば良いだけだ、ありとあらゆる検査をしてもらう…」
「口実は陽葵ちゃんバイトしてたから新薬のデータの為とか言ってバイト代を出してやってもらおうと思うの。」
真夜は真っ直ぐだ。
「そんな検査してもらえる病院なんてあるのか?」
秀一は現実的に考える。
「なんとかなるかも…おじさま(養父)とおばさま(養母)のかかりつけの病院がエターナルなの…あそこなら…」
真夜はもじもじしながら話した。
「エターナルってエターナル総合病院か…日本の名医100に選ばれている医師ばかりのVIPしか治療しないで有名なとこじゃないか!」
秀一は真夜から出る上級国民ワードにヘロヘロだ。
「エターナル…ゆゆしき…です!」
美優希の顔つきが変わる。
「ゆゆしき、なのか?」
秀一は不思議そうに聞き返す。
「………ッ…です‼︎」
美優希は本気だ。
「りょうかいであります。」
迫力に負けて、秀一は美優希に敬礼する。
「ふたりとも…もし、何かあれば…迷わずに無銘に来る…です‼︎」
美優希は不安気だ。
「無銘…に…」
…と真夜。
鼻息荒く美優希は…
「…です‼︎」
秀一と真夜は見つめ合う…
カンファレンスルームの窓には、ひどい夕立になった大きな雨粒がバチバチと打ちつけていた。
落雷と共に降り出した豪雨に真夜は思う。
あの陽葵の白く染まった色も流してはくれないものかと思わずにはいられなかった。


