今日も、瑆に避けられる智徳。小さくため息を吐き、グラウンドへ出た。いつもは顧問と目が合わないのだが、今日は珍しく目が会う。
(これは、なんかあるな……)
顧問を警戒しつつ、問いかけられそうな質問を頭の中で巡らせる。万引きのこと、瑆の体調のこと、自分の成績のこと、タイムのこと……。一通り、されるであろう質問を考えつくし、答えを用意した。マスクがない今は顔に出やすい。表情を一度、引き締めてゆるめる。
「智徳、瑆のことなんか知っているか?」
陸上部の顧問が、アップ中の智徳のところまで来て話しかけにきた。
「いえ、知りません。向こうも僕のことを避けていますし、思春期じゃないんですか?」
「お前も思春期みたいなもんだろ。思春期同士、なんかわかり合えることとか……」
「それこそ、思春期が終わった先生の方がわかるんじゃないんすか?」
「若いもんの気持ちは年寄りにはわからんのよ」
ボリボリ、と顧問は白髪交じりの髪の毛をかく。
顧問に言われる前から、わかっていた。ただ、瑆にとって努力とも言っていい行為を僕は否定できないでいる。どんな言葉を瑆にかけていいのか、高校生の僕にはわからない。ただ、走りで伝えるしかない。そう信じて、今日も朝練や放課後の時間を大事にして走り込む。
♢
今日は雨でグラウンドは使えない。柔軟と階段走の軽いメニューだったので、僕は図書館に来た。勉強ついでに、瑆へのかける言葉を探す目的もある。パラパラ、と僕でも読めそうな小説を手に取り読んでは本棚に片付けていく。
(今日も、言葉は見つからない)
瑆は練習が終われば、逃げるように帰ってしまう。他の部員も寄せ付けない空気を醸し出していた。
(そりゃ、鈍感な顧問でも気づくよな)
図書館の帰り道、歩道を歩いていれば、正面から見たことがあるフォームで走る人が見えた。
(瑆だ)
(これは、なんかあるな……)
顧問を警戒しつつ、問いかけられそうな質問を頭の中で巡らせる。万引きのこと、瑆の体調のこと、自分の成績のこと、タイムのこと……。一通り、されるであろう質問を考えつくし、答えを用意した。マスクがない今は顔に出やすい。表情を一度、引き締めてゆるめる。
「智徳、瑆のことなんか知っているか?」
陸上部の顧問が、アップ中の智徳のところまで来て話しかけにきた。
「いえ、知りません。向こうも僕のことを避けていますし、思春期じゃないんですか?」
「お前も思春期みたいなもんだろ。思春期同士、なんかわかり合えることとか……」
「それこそ、思春期が終わった先生の方がわかるんじゃないんすか?」
「若いもんの気持ちは年寄りにはわからんのよ」
ボリボリ、と顧問は白髪交じりの髪の毛をかく。
顧問に言われる前から、わかっていた。ただ、瑆にとって努力とも言っていい行為を僕は否定できないでいる。どんな言葉を瑆にかけていいのか、高校生の僕にはわからない。ただ、走りで伝えるしかない。そう信じて、今日も朝練や放課後の時間を大事にして走り込む。
♢
今日は雨でグラウンドは使えない。柔軟と階段走の軽いメニューだったので、僕は図書館に来た。勉強ついでに、瑆へのかける言葉を探す目的もある。パラパラ、と僕でも読めそうな小説を手に取り読んでは本棚に片付けていく。
(今日も、言葉は見つからない)
瑆は練習が終われば、逃げるように帰ってしまう。他の部員も寄せ付けない空気を醸し出していた。
(そりゃ、鈍感な顧問でも気づくよな)
図書館の帰り道、歩道を歩いていれば、正面から見たことがあるフォームで走る人が見えた。
(瑆だ)
