生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 夜になり、婚約の儀式が行われようとしていた。
 出会った初日で行うのは異例だが、もう何度も御影が婚約に失敗しているので狐族が焦っているのだろう。
 屋敷の客間に狐族である使用人が集まっている。
(やっぱりみんなうつくしいのね)
 その中でも御影は別格だった。一人だけ放つオーラが違う。
 彩は自分が場違いのように感じ、居心地が悪かった。
「あのぅ彩様の親族は...」
 使用人の一人が遠慮がちに聞いた。
「すみません、来ません...」
「さようですか...」
 使用人が気まずそうに去っていった。
 婚約の儀式に親族が来ない。狐族に対して失礼に当たるだろう。
 来るはずがない。。わかっていることだったが、本当に自分が場違いな人間だと感じた。
「...おい、手を握り締めるな。けがをされたら面倒だ」
 いつの間にか隣に座っていた御影が顔をしかめている。
 その言葉で自分が手を握り締めていたことに気が付いた。
 力を入れすぎて手が白くなっていた。
「すみません...」
 本当に自分はダメな人間だ。無能だ。家族は正しい。
「謝るな。気持ちのこもっていない謝罪など無意味だ」
「すみません...あっ」
「...もういい」
 あきれられた。自分は簡単なことすらできない。
 そうこうしているうちに儀式が始まった。
 式自体は簡素なもので、彩と御影、そして使用人、御影の部下たちだけで行われた。
 最後に盃を交わすだけだ。
 彩は酒を飲んだことがないので、飲むふりをした。
 交わしたとたん、強風が吹いた。
「きゃあ!」
「うわぁ!」
 あちこちから悲鳴やら叫び声が聞こえる。
 御影は即座に彩に覆いかぶさった。
(守ってくれてるの?)
 誰かに守ってもらうのは久しぶりのことだった。