生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 伏見家の屋敷に着くと、麗奈は圧倒された。
「なにこれ...うちの何倍の大きさよ」
 こんないいところに彩が住んでるわけない。
 門の隙間からのぞき込むと、目を疑う光景が広がっていた。
 きれいな男の人と彩が微笑みあって話している。
 彩の格好は吉柳家にいたころのみすぼらしい恰好とは異なり、いかにも高級そうな上質な着物を着ていた。
 髪は艶やかで、男性を見つめる目は輝いており、頬を上気させて、話していた。
 男性は麗奈が今まで見てきた中で一番きれいな人だった。透けるような銀色の髪、吸い込まれそうな翡翠色の瞳。
(ありえない、あのお姉さまが、あんな姿で、伏見家でうまくやっているなんて、あんな素敵な殿方と...!)
 麗奈は気がおかしくなりそうだった。
(本当なら、私が嫁いでいたはずなのに!)
 麗奈は家に帰り、外では抑えていた怒りがあふれ出す。
「お母さま!どうして私を伏見家に嫁がせてくれなかったの!」
 突然怒って帰ってきた麗奈に母は戸惑う。
「あなたも嫌だって言ったじゃない」
「あんなに素敵な殿方って知ってたら婚約してたわよ!」
「何があったの?麗奈」
 今までにないほど怒る麗奈を見て母はどうすればよいのかわからない。
「お姉さまが幸せそうに笑ってたの!私よりも良い着物を着て!殿方と笑いあっていたのよ⁉」
「あの彩が...?」
 いつも縮こまっていたあの彩が?
「もう私どうにかなりそう!」
「落ち着け、麗奈」
 それまで黙っていた父が口を開いた。
「客が来た」