生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 今日は文江と刺繍をしていた。
「痛っ」
 針を自分の指に刺してしまった。ちくりとした痛みが広がる。
「大丈夫ですか⁉」
 文江が救急箱を取りに行き、手当てをしてくれた。
「すみません。ありがとうございます」
「いえいえ、何かあったんですか?最近どこか上の空のような気がして」
 さすが文江鋭い。
「いえ、何も」
 彩は嘘が下手だ。声が上ずってしまった。
「文江は心配なんですよ。彩さまはため込みやすいですから。」
 文江は心配してくれている。文江に話せば解決するかもしれない。
「もし、自分の大切な人が自分がそばにいるせいで亡くなっしまうとしたら、文江さんならどうしますか?
 離れますか?...それともそばにいますか?」
「うーん、難しい問題ですね。まずは相手の気持ちを聞きますかね、自分はもちろん離れたくないですし、
 相手も離れたくないんだったら、そばにいたいです」
「相手が長く生きられなくても?」
「長生きできるからって幸せなわけじゃありませんからね。生きていても大切な人がこの世にいないなら、
 きっとそれはすごくつらいことでしょうから」
 つらいこと、御影が苦しむのは嫌だ。御影にはいつも笑っていてほしい。
「彩さま、文江は嬉しいんですよ。彩さまが来てから坊ちゃまは変わりました。
 誰にも心を開かず、弱みを見せられなかった。でも今は、毎日笑顔であふれていて、
 とても幸せそうなんです。どうか自分を責めないで。
 彩さまも坊ちゃまももっと幸せになっていいんです」
「文江さん...」
 自分はなんて恵まれているのだろう。こんなにも自分を想ってくれる人がいる。
 彩は涙が止まらなかった。
「すみませ...」
「謝らないでください、たくさん泣いてたくさん笑いましょう、これからも」
 文江が握ってくれた手はとても温かかった。