生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 車に乗っている、移り変わる景色が鮮やかで彩は目を奪われた。
(街ってこんなににぎやかだったんだ)
 なんせ彩が最後に街に行ったのは八歳の時だ。
「そんなにおもしろいか?」
 御影に聞かれる。
 彩は我に返った。はしたないこんなにきょろきょろしているなんて。
「すみません...」
 彩が謝ると御影は少し眉をひそめた。
「なぜ謝る。つまらなさそうにしているよりよっぽど良い。気にせず続けろ」
 御影はぶっきらぼうだが、本当にやさしい。
 最初に文江が言っていたとおりだ。
 だから
 この人となら、そんな淡い期待をついしてしまう。
「...最初はどこへ行くんですか?」
 気持ちを切り替えて御影に聞いた。
「まずは、雑貨屋を少し見に行くつもりだ。街は種類が豊富だからな」
「そうなんですね」
 少し会話をしていたら目的地に着いた。
 人が多く、人混みに慣れてない彩は人とぶつかってしまう。
 その時、御影が彩の手を握った。
「はぐれると、面倒だからな」
「はい...」
 つながれた手は大きく、少し骨ばっていて、やさしく壊れ物を扱うようにしているけれど、
 絶対に離れないという安心感があった。
(この時間が永遠に続けばいいのに)
 願っても仕方ないことばかり願ってしまう。
 自分でも知らなかった自分がこの人といると、見えてきてしまう。
 彩は幸せなのに、なぜか切なかった。