生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 バシャッ!!!

「まっずい味噌汁。ほんと無能ね!!」

 熱い味噌汁が彩の体にかかった。

「申し訳ありません...」

 彩は膝をつき妹の麗奈に謝る。

「麗奈っ怪我はない⁈」

 母は味噌汁をかぶった彩ではなく麗奈を心配した。

「お母さまぁこんな使用人未満のお姉さまどうにかしてよ。ほんっと辛気臭い顔。見るだけで不快だわ」

 彩は手を握り締める。言われなれていることだった。

「麗奈今日は我慢してちょうだい。今日でここからいなくなるんだから。ねえあなた」

 新聞を見ていた父が口を開く。

「あぁ...彩は伏見家に嫁がせる。今夜婚約の儀式が行われる予定だ」
「伏見家ってあの妖の中で歴代最強の狐族⁈今まで何人もの令嬢が泣いて逃げてきたって噂じゃない!」

 麗奈が嬉しそうに口角を上げた。

「本当は異能がある麗奈にって話だったのよ。でもこんなに可愛い娘をあんなところに嫁がせるわけにはいかないじゃない。
 だから彩に異能がないことを隠して彩を送ることにしたのよ」
「当たり前でしょ。この私が伏見家なんかに嫁ぐわけないじゃない。
 フフッお姉さまにお似合いよ。...何よその顔まさか文句でもあんの?」

 麗奈が眉を吊り上げた。

「滅相もございませんありがたく受けさせていただきます」

 彩は深々と頭を下げた。

「そうとなったら早く荷物をまとめなさい。新しい着物と送りの車を出してあげたからな」

 父の言葉にうなずき礼をしてから自分の部屋へ向かった。

 物置きほどの大きさしかない部屋には数えられるほどのものしかない。
 新しい着物は名家の令嬢として最低ラインの質だったが使用人と同じ着物を着ていた彩にとってはとても豪華に感じられた。

(もしかしたらここよりはいい場所かもしれない)
 そんな淡い期待が彩の胸に宿る。

「荷物少ないくせにちんたらしないでよ」

 いつの間にか入り口の前に麗奈が立っていた。

「もしかして新しい家に期待してる?フフッあんたなんかが伏見家に気に入られるわけないでしょ。
 地味でのろまないいところなんか一つもないあんたなんかにね」
「わかっています...」

 そう わかっていた期待するだけ無駄だとずいぶん前に思い知ったはずだ。

「お姉さまは一生幸せになんかなれないから。一生ね」
 そういい残して麗奈はどこかへ行ってしまった。
 麗奈の言葉が深く突き刺さったが気づかないふりをした。