生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 仕事場に着くと、すでに情報屋が来ていた。
 さすが伏見家御用達の情報屋だ。仕事が早い。
「たまにある話なんですけどね、妹が生まれるまでは普通に大事に育てられてきたみたいなんですよ。
 でも生まれてきた妹が体が弱かったみたいでね、今はもう元気なんだけど、昔は両親つきっきりで看病してたみたいなんです。
 最初は心配でずっと妹のほうにべったりだったんでしょうけど、いつしか愛嬌があって甘えたな妹に心を奪われてしまったんでしょ    
 ね。姉が両親にかまってもらおうとするたびに、ないがしろにし、しまいには自分ばっかりの気が使えない子って認識されてしまった
 見たいです。姉を邪険に扱う両親を見て、妹も姉を見下すようになったらしいです。最低ですけどね」
 ひどい話だった。妹ばかりをかまう親も、彩を見下す妹も。
 情報屋の話はまだ続く。
「今までずっと、使用人と同じ着物着て、料理や、洗濯、掃除や雑用などをさせられてね、
 使用人同様、もしくはそれ以下の扱いを受けてたみたいだ。
 それまで習っていた女学校や華道、茶道などのお稽古も辞めさせられて」
 御影あまりのひどさで怒りで言葉が出なかった。
 あんまりだ。実の娘にそんな扱いをするとは。
「もういい、ありがとう」
 情報屋が帰り、御影は彩のことを思い返す。
 いつもどこか寂しそうで、でもすべてをあきらめたような顔をしていた。
 それなのに自分は何と言った?
 面倒は起こすな、なれ合うつもりはない?
 最低だ。
 どれほどの覚悟で嫁いできたのだろう、怖かっただろう、皆から恐れられている伏見家に嫁ぐのは。
 御影は自分の愚行を恥じた。
 そして、もっと彩を自分から自分から知ろうと思った。
 同情ではなく、彩の気持ちを分かち合いたいと思う気持ちであった。