生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 御影が仕事に行く時間になり、彩はお見送りをしに行った。
「あの、お弁当も作ったので、もしよければ...」
 おずおずといった様子で彩が弁当を差し出した。
「ありがとう。」
 彩の顔がかすかに明るくなった。
「もし負担じゃないのなら、これからも作ってほしいのだが」
「負担じゃありません。毎日お作りします!」
 今度はかすかにじゃなく、確かに口の端を上げて答えた。
 御影は初めて彩が笑うのを見た。
「...では行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
 御影は車に乗っても彩の笑顔が頭から離れなかった。
 鳴りやまない胸の鼓動は契約のせいだろうか。
 どこかふわふわした気持ちだった御影だが、彩が料理を褒めてもらえるのは初めてだと言っていたのを思い出した。
 まず吉柳家ほどの名家なら料理人はいるだろう。彩が料理に慣れているのはおかしい。
 あのあかぎれだらけの手は、普段から料理をしている手だった。
(一体どんな家庭で育てられてきたんだ...調べてみる必要がありそうだな。)
 御影は静かに決心した。