生贄にされた花嫁は不老不死の妖狐に愛される

 御影が自室に戻ろうとすると、文江が起こった様子で呼び止めた。
「坊ちゃま、先ほどの彩さまに対する言い方は厳しすぎます。
 そんなんだから見合いがうまくいかないんですよ」
 文江に容赦なく言われ、御影は少し動揺した。
 御影が生まれてくる前から伏見家に仕えている文江には御影の弱いところや情けないところをすべて知られている。
 そのためか使用人からも一目置かれている御影であるが、文江は遠慮がなく、御影も文江には弱かった。
「そんなことはない、普通だろう。
「いーえ、そんなことはありません!いいですか、彩さまは素敵なお嬢様です。
 上品で、私のような使用人にも気遣って接してくれました。文江はそのような婚約者さまは初めてでございました。
 絶対に逃してはいけません!」
 御影は文江の圧に圧倒された。文江はいたく彩を気にいったらしい。
「そうか?」
「ええ、もっと彩さまを知ろうとしてください。
 そうすればきっと坊ちゃまも彩さまを好きになります」
「色恋は求めていないのだが...」
 そう言った途端、文江は少し悲しげな顔をした。
「坊ちゃま、誰しも一人では生きていけません。坊ちゃまはとても努力なさって誰よりも強くなったけれど、
 休める相手が必要なんです。文江は坊ちゃまに幸せになってほしいんです」
「文江...わかった、努力はしよう」
 文江に心配をかけていた。己の未熟さを恥じる。
「約束ですよ、坊ちゃま」
「あぁ」
 文江は満足した様子で御影に礼をしてその場を離れた。
 確かに彩は今までの令嬢とは少し違っていた。
 知るのはそう悪くない話だろう。