柏くんの美味しい愛し方


すると、中に見えたのは黙々と料理をしている派手髪の男子生徒が1人だけ。周りには誰もいない。その男子生徒は薄ピンクと淡い紫が混ざったような髪色をしていて、髪型はオシャレにセットされている。耳にはピアスをつけて首にはシャツの隙間からネックレスが光って見えた。

その分かりやすい特徴で、彼が誰なのかすぐに分かった。

「…もしかして、あのリトルデビルカシワ?」

そうだ、あれは同じ学年でクラスは確かB組の『リトルデビルカシワ』とあだ名がついている生徒だ。一度も話したことはないが、派手で目立っているからよく目に入る。明るい性格とコミュニケーション力の高さ、あのルックスで男女共に人気があると噂はよく聞く。

なぜリトルデビルなのかと言うと、ああ見えて彼は明るいヤンキー。他校でもこの学校でも売られた喧嘩は必ず買うしすごく強いらしい。ニコニコ無邪気な笑顔で相手を殴り倒す様子がリトルデビルのようだ、とその名がついたと言われている。

そのリトルデビルカシワが、家庭科室で料理をしている。

なぜ?

少しその場で様子を見ていると、ちょうど何かを作り終えて皿に移しているようだった。エプロンをつけてフライパンを持っている姿が似合わなさすぎる。料理の匂いよりもその姿が不思議で気になりすぎて目が離せない。

でもこんなにずっと覗き見するの良くないな、と思い今まさに帰ろうとした時だった。バチッと効果音が出そうなほど、リトルデビルカシワと思い切り目が合ってしまった。俺が慌てて目を逸らすと、彼は素早くこちらに走ってきて扉を勢いよく開く。

しまった、見てたことを怒られるかもしれない…。いくら明るくても喧嘩っ早いことには違いないから、もしかしたら胸ぐらとか掴まれるかも…!?

そうビクビクしながら考えて、覗き見してたことをまず謝ろうと「あの、見ててごめんなさい」と頭を下げた。

しかし、リトルデビルカシワの反応は想像と全く違うものだった。

俺の顔を覗き込んでじーっと凝視した後、「お前今ひま?」と声をかけてきたのだ。

「ひま…というか、部活から帰るところで」
「じゃあちょっと時間あるだろ?俺の料理味見してくんね?」
「…え、」