バスケ部の練習は日に日にハードになっていく。というより、俺の体力が減ってきたからいつもの練習が余計に辛く感じるのかもしれない。
「水見!いけ!リバウンドリバウンド!」
「…っ!はぁ、はぁ、すんません!!」
「ドンマイ!戻れ戻れー!」
全力で走っても追いつくのがやっとでリバウンドが取れないことも増えてしまった。チームメイトや後輩の声援と顧問からの厳しい声かけが重なるように体育館中に響いて、緊張感を走らせる。
喉が引き裂かれそうなほど息を切らして走っているが、周りに追いつけない。胃は空っぽで軽いはずなのに、体も鉛が溜まったように重い。ダメだ、このままじゃ…。大好きなバスケなのにやっているのが辛くなってしまう。
先輩や同級生も励ましの言葉をかけてくれるが、明らさまに不調が続いてる俺を変に思っているに違いない。ついには顧問に「ちゃんと飯食ってるか?」と聞かれてしまい、焦った俺は食べてますと食い気味に答えてしまった。
練習後の後片付け中、今日の反省点を頭で考えながらひたすらモップを床に走らせた。もうここまできたら、吐いてでも無理やり食べて体力をつけるしかないか…と考えてしまう。
「水見、それ片したら帰ろう」
「あ、うん」
「はー帰ってから課題やんのダリィな」
「課題…あ!しまった、忘れてきた…」
他の片付けを終えた同じクラスの友人に声をかけられ、課題プリントを挟んだノートを教室に忘れてきたことに気が付いた。
「ごめん、後で教室行って取ってくるから今日は先帰ってて」
「おー分かった。気を付けてな」
友人に断りを入れ、ノートを早く取りに行くためにさっさと後片付けを終わらせた。最近こういったうっかりすることも増えた気がする。ご飯を食べれていない影響なんだろうか。
スポーツバッグを手に取り、体育館を出てから教室へと急いだ。時刻はもうすぐ19時。既に辺りは暗くなってきて、校舎内の生徒も少なくなっている。人がいなくて薄暗い校舎は不気味だな、と思いつつ急ぎ足でノートを確保した。
そして階段を降りてきた時。また何か料理の匂いが鼻を通り抜けて行った。
でも、部活前に感じた匂いとは違う。今度は醤油や出汁のような和風の香りだ。また家庭科室からその匂いが漂ってきているようだが、運動部でもない家庭科部がこんな時間まで活動するはずないのに。
無性に気になって、俺はつい家庭科室の扉の小窓をこっそり覗いてしまった。

