お菓子やパンは通常のご飯よりも食べられるが、やはりあまり受け付けない。エナジーゼリーやプロテイン系が唯一吐かずに摂取できるものだった。俺がご飯を食べられないことを話すと、あんなにうるさく小言を言ってきていた母親は愛想が尽きたように「食べたくないなら好きにすれば」と呟いた。
それが悲しいとは思わず、むしろ気持ちが軽くなった。無理に一緒に食事を摂らなくていい、2人と顔を合わせなくていいんだと思うとそっちの方が楽だ。
外からは『いい家族』『ご立派な息子さん』と思われたい両親だから、学校行事や部活のことは何も言わず支援してくれる。三者面談の時も、驚くほど別人のように明るく話す。俺に関して興味があるのは、成績と部活動実績、生活態度のみになり、いよいよ小言さえ言わなくなった。それ以外は無関心というやつだ。
それでも、過干渉よりはそっちの方がやりやすかった。好きなバスケもやれて、学校では友達も多くて親に監視されないのが楽しい。
当然、あの日に持っていた漫画は全て捨てられたけど、俺のセクシュアリティは変わっていない。別に学校で恋人を作りたいとかは思っていないし何かする気もない。だけど、男が好きだということは絶対周りにバレてはいけないということは理解していた。
そこは上手くやり過ごしているから学校生活については問題ない。むしろ今抱えている問題は別のこと。さっき顧問に言われた話だ。このままマトモに食べられない日々が続くと、体力も集中力も落ちて部活に支障が出てしまう。最悪スタメンを降ろされるなんてことも有り得る。
このままではよくない…。そう思うのに、どうしても食べられない。
何かを口にする度、あの夕食の時間に起きたことや言われたこと、あの時の気持ちを思い出して気持ち悪くなってしまう。

