柏くんの美味しい愛し方


「え?飯作ってやるって…な、なんで?」
「だって俺の料理が唯一食べられたんだろ?なんかそれすげー嬉しいし、俺も料理の練習で食べてくれるヤツ欲しかったからさ!これから放課後、家庭科室寄れよ!」

柏くんが俺に料理を作ってくれる…?今日初めて話した奴に今後も料理を振舞ってくれるなんて、普通なら有り得ない。やはり、すごくぶっ飛んだ思考をしている。今まで出会ったことがない人種かもしれない。

「てか、さっきは事情知らねーから無理に味見させて悪かった!これからも無理そうだったら、その時は食べなくてもいいからさ。どう?」

「な、なんで…今日初めて話した俺にそこまで?」

「んー、なんだろうな。俺さ他の奴に家庭科部入ってることあんまり言ってないんだよね。でもなんか、さっきこっち見てるお前の顔見たら、名前も知らないのになんか…こいつは馬鹿にしなさそうだなって直感で感じだから。今も話してみて良い奴そうって思ったし」

「…直感?というか、家庭科部なの!?」

「そうそう!弟のために料理上手くなりたくて家庭科部入ったんだよねー。でも俺が来ると後輩とか女子は怖がるかと思ってさ。だから顧問に頼んで、活動終わった後にここ使わせてもらってんの。だからこの時間は俺しかいないし気楽だろ?」

この人、家庭科部だったのか。しっかり部活動やるタイプに見えなかったし、ヤンキーが文化部ってだけでギャップなのに、更には弟のために料理をするなんて…。家族思いで家庭的な優しいヤンキーって、漫画だけじゃなくて現実にもいたのか。

「それに、俺の飯食って泣くなんて余程だろ。バスケ部なら飯食って体力つけねーとキツイはずだし。お前のそのやつれた顔見てたら、今は無理でもいつか腹一杯食わしてやりてーなって思っちゃったんだよね」
「柏くん…」
「だから、これから俺が美味い飯食わせてやるよ。な?水見」

そう言ってニカッと眩しい笑顔を見せながら、柏くんは俺の背中をポンポンと叩いた。背中に感じた大きな手のひら。叩かれた所が温かくて、下がりまくってた体温がじわじわ戻ってくるような感覚がした。

強引で遠慮がないのに太陽みたいに笑う人。この人が作るご飯をもっと食べてみたいと思った。何かを食べたいって思うことなんて、今まであったっけ?子供の頃はあったと思うけど、もう何年も無いに等しい。

それに、もし柏くんの料理をもっと食べられるようになったら、体調も回復して力が出るようになるかもしれないし。普通に食事ができるようになるかもしれない。

これは、何かのキッカケ…?それとも…運命?

「…じゃあ、お願いしてみてもいいかな」
「おう!任せろ!部活終わったら、これからここ寄れよ。そんくらいの時間には課題メニュー出来てると思うから」

嵐のように俺の中に舞い込んできたこの人に、巻き込まれてみたいと思ってしまった。