1月1日。年が明けた瞬間の除夜の鐘。コタツで微睡んでいた僕は、スマホの呼出音で飛び起きた。着信画面を見ると、『飛田優征』。僕の心臓はドキンと鳴り打ち、一気に目が覚める。
「……はい」
「葵、あけましておめでとう」
開けてびっくり、ビデオ通話だった。初詣の参拝の行列に並んでいる最中のようだ。
「日下、あけおめ! ことよろ! 」
前野くん、風見くん、住田くんも画面に出てきて、ぽかん、としてしまった。田舎から彼らを見ていると、別世界な気がした。自分は本当にそこにいたのかな?
「どうした? 寝てた? 」
優征くんがカメラに向かって軽く手を挙げてきた。いつもと変わらないその仕草を見て、優征くんだ、と思った。
「あ、ううん。起きてたよ。僕、優征くんのこと知ってるなって思って」
僕にはたしかに彼らと過ごした時間があった。心配するとすぐに眉間に皺が寄る優征くんも、みんなを冷静にまとめてくれる風見くんも、ムードメーカーな前野くんも、のんびりとした住田くんのことも、みんなみんな知っている。高校生にもなって深夜0時を迎え入れられずに居眠りしていたなんて恥ずかしくて、僕は嘘をついてしまったけれど。
「忘れられていたら俺、そっちまで押しかける。帰ってくるまで待てないから」
優征くんの真剣な顔。本当に来そうだ。
「忘れてないよ。ずっと優征くんのこと考えてた。おばあちゃんにも話したんだよ。あ、明けましておめでとうございます」
優征くんははっきりとホッとした顔をした。忘れているわけないのに。自分が忘れたら悲しむのだとわかって、湧き上がってきた喜びを堪えられずに、笑顔がこぼれた。
「俺もずっと葵のこと考えてた。おばあちゃんになんて話したの? 」
「……いちばん仲良い……ともだちって」
ともだち、の声はすごく小さくなった。優征くんを友達だと思っているのか、自信が無い。そりゃ友達だけれど、もっと、なんていうかその……特別みたいな。この田舎まで来てくれるとしたら、心の底から喜べる相手は優征くんだけだと思う。優征くんに言ったら喜ぶとわかっているのに、言えない。なんだか恥ずかしくて。
「友達、ね」
優征くんの瞳は彷徨っていた。だから合わないだろうと安心しきってその瞳を追っていたら、突然パチリと衝突してしまった。目を逸らしたのは僕だった。
「あ、うん、ともだち」
隠れている本音を見透かされるのが怖くて、ありきたりな定義を吹聴した。
「ふーん、友達」
僕の言葉は、検品されていた。ばくばく、と年が明けても心臓はうるさい。傍にいなければ、触れられなければ、ドキドキしないと思っていたのに。
――離れているのにドキドキする。
「なんか俺たち、ノケモノにされてねー? 」
むいっと空気を破るようにカットインしたのは、前野くんだった。
「いつもそんなもんじゃなーい? 」
住田くんがモフモフのマフラーに顔を埋めながら言った。手袋をはめた手には甘酒を持っている。
「そろそろ順番だよ」
風見くんが優征くんの肩を叩いた。触れる距離にいるのを羨ましく思った。
「電話くれてありがとう」
切らなくちゃ、と思って僕は笑った。優征くんとふたりきりでなければ、基本的にドキドキしないで接することができる。――なんでだろう?
どーいたしまして、とみんなはしゃいだ。
「葵」
優征くんから秘めるように呼ばれて、はい、と背筋が伸びた。ビデオ通話なのに。
「休み明けの朝、迎えに行くから。一緒に学校行こう。ふたりで」
顔が近い。スマホ越しでも緊張する。
「う、うん! 」
赤べこのようになって僕は頷いた。
「じゃあな、おやすみ。温かくして寝ろよ」
「おやすみ」
軽く手を挙げている優征くんに、僕は小さく手を振った。
おばあちゃんには悪いけれど、冬休みが終わるのを待ちきれない。
「……はい」
「葵、あけましておめでとう」
開けてびっくり、ビデオ通話だった。初詣の参拝の行列に並んでいる最中のようだ。
「日下、あけおめ! ことよろ! 」
前野くん、風見くん、住田くんも画面に出てきて、ぽかん、としてしまった。田舎から彼らを見ていると、別世界な気がした。自分は本当にそこにいたのかな?
「どうした? 寝てた? 」
優征くんがカメラに向かって軽く手を挙げてきた。いつもと変わらないその仕草を見て、優征くんだ、と思った。
「あ、ううん。起きてたよ。僕、優征くんのこと知ってるなって思って」
僕にはたしかに彼らと過ごした時間があった。心配するとすぐに眉間に皺が寄る優征くんも、みんなを冷静にまとめてくれる風見くんも、ムードメーカーな前野くんも、のんびりとした住田くんのことも、みんなみんな知っている。高校生にもなって深夜0時を迎え入れられずに居眠りしていたなんて恥ずかしくて、僕は嘘をついてしまったけれど。
「忘れられていたら俺、そっちまで押しかける。帰ってくるまで待てないから」
優征くんの真剣な顔。本当に来そうだ。
「忘れてないよ。ずっと優征くんのこと考えてた。おばあちゃんにも話したんだよ。あ、明けましておめでとうございます」
優征くんははっきりとホッとした顔をした。忘れているわけないのに。自分が忘れたら悲しむのだとわかって、湧き上がってきた喜びを堪えられずに、笑顔がこぼれた。
「俺もずっと葵のこと考えてた。おばあちゃんになんて話したの? 」
「……いちばん仲良い……ともだちって」
ともだち、の声はすごく小さくなった。優征くんを友達だと思っているのか、自信が無い。そりゃ友達だけれど、もっと、なんていうかその……特別みたいな。この田舎まで来てくれるとしたら、心の底から喜べる相手は優征くんだけだと思う。優征くんに言ったら喜ぶとわかっているのに、言えない。なんだか恥ずかしくて。
「友達、ね」
優征くんの瞳は彷徨っていた。だから合わないだろうと安心しきってその瞳を追っていたら、突然パチリと衝突してしまった。目を逸らしたのは僕だった。
「あ、うん、ともだち」
隠れている本音を見透かされるのが怖くて、ありきたりな定義を吹聴した。
「ふーん、友達」
僕の言葉は、検品されていた。ばくばく、と年が明けても心臓はうるさい。傍にいなければ、触れられなければ、ドキドキしないと思っていたのに。
――離れているのにドキドキする。
「なんか俺たち、ノケモノにされてねー? 」
むいっと空気を破るようにカットインしたのは、前野くんだった。
「いつもそんなもんじゃなーい? 」
住田くんがモフモフのマフラーに顔を埋めながら言った。手袋をはめた手には甘酒を持っている。
「そろそろ順番だよ」
風見くんが優征くんの肩を叩いた。触れる距離にいるのを羨ましく思った。
「電話くれてありがとう」
切らなくちゃ、と思って僕は笑った。優征くんとふたりきりでなければ、基本的にドキドキしないで接することができる。――なんでだろう?
どーいたしまして、とみんなはしゃいだ。
「葵」
優征くんから秘めるように呼ばれて、はい、と背筋が伸びた。ビデオ通話なのに。
「休み明けの朝、迎えに行くから。一緒に学校行こう。ふたりで」
顔が近い。スマホ越しでも緊張する。
「う、うん! 」
赤べこのようになって僕は頷いた。
「じゃあな、おやすみ。温かくして寝ろよ」
「おやすみ」
軽く手を挙げている優征くんに、僕は小さく手を振った。
おばあちゃんには悪いけれど、冬休みが終わるのを待ちきれない。
