高校1年生。初恋グミは優しい味でした。

翌日、僕たちはまたファミレスで勉強をしていた。昨日の座り順がなんとなく暗黙の了解になっていたのだけれど、今日は違った。ソファの1番奥に優征くんが座ったのだ。

「葵、隣こい」

「あ、うん」

いつも右隣だった優征くんは、左隣になった。

僕が座ると、右隣に風見くんが。そしてアイコンタクトをしているらしい前野くんをスルーして、住田くんが反対側の奥、優征くんの正面へ。そしてため息を着いて、前野くんがその横へかけた。言ってしまえば、優征くんと風見くんが逆になっただけなのだけれど、違和感がある。

「すみません、ドリンクバー5つ」

通りがかった店員さんに、優征くんが手のひらを"5"に拡げて注文した。

「ありがとう、飛田。まあ、やろうか」

店員さんが去っていくと、風見くんが穏やかに、カバンからテキストを取り出した。僕やみんなもそれに倣って勉強道具を出す。

「先にドリンクバー取りに行こうぜ」

前野くんの掛け声に合わせて、みんなで取りに行く。

コップにオレンジジュースを注いでいると、前野くんに肩を叩かれた。

「ねぇ、見て、日下。アセロラジュース×コーラ」

前野くんは子どものようにニコニコしている。

「それおいしいの? 」

見た目的にはただのコーラとそう変わらないけれど。

「さぁ? 初めてやったから! 俺は新ドリンクを開発するんだ! 」

「いいけど、それちゃんと飲めよ。残すなよ」

サイダーを持った優征くんが呆れ顔で言う。

「飲むよ! 口うるさいなぁ、もう。お父さんかよ! 」

「おとっ、おとうさん?! 」

べーっと舌を出した前野くんに、優征くんが立ち尽くしていた。

「たしかにお父さんみたいかも、優征くんって」

僕は思わず頷いた。なんやかんやと世話を焼こうとするところなんか、うちのお父さんそっくりだ。

「は?! 」

優征くんは固まってしまった。

「そうそう、ウチのオヤジにそっくり。俺がやること全部にあれこれと小言言ってくるんだぜ」

前野くんはやれやれ、と言うように笑いながらテーブルへ歩いた。みんなでテーブルに戻る。

「それはお前が危なっかしいことばっかりするからだ! 」

優征くんが反論した。危なっかしいことをされると、目が離せなくなってしまうのだろう優征くんの性格はまさに。

「いいお父さんになりそうだよね、優征くんは」

僕は言い終わると、オレンジジュースを飲んだ。

ぶはっと前野くんは吹き出した。優征くんは眉根を寄せてしまった。あれ? 褒めたのに。

「ど、どうも」

ショック、と顔に書いてあるような……。

「お疲れ、飛田」

風見くんの労いに、優征くんは曖昧な返事をすると、僕たちは今度こそ勉強をした。

現代社会の問題を解いていると、僕の左手が握られた。顔をあげると、優征くんの手だった。なぜだか楽しそうだ。僕はまた、心臓が急にうるさくなった。

「ごめん。消しゴムとまちがえた」

「うん、大丈夫」

返事をするがしばらく握られているので、もう一度見上げると、今度こそパッと離された。ふぅ、とバレないように息をつく。

住田くんに教えだした優征くんを尻目に、僕も集中した。あ、まちがえた。そう思って消しゴムを左手で探すと、なんだか大きいものを握ってしまった。

「あ! ご、ごめん。僕もまちがえた」

優征くんの手だった。慌てて離した。消しゴムと手って間違えやすいのかも。

「うん。いいよ。どんどん間違えて」

なんで? と目を見開くと、前野くんがトンっとコップを置いた。見事アセロラジュース×コーラを飲み干していた。

「お前らそれ、わざとだろ?! 」

勢いよく聞かれて、僕はきょとん、としてしまった。

「な、なにが? 」

「さあな? 」

優征くんはクールだった。

「リッキー、突っ込むな。やぶ蛇だぞ」

風見くんが苦笑いで言う。

「俺、集中できないよ」

バンッと机に突っ伏してしまった前野くんを見ながら、なんの話しだろう? と僕は思った。