高校1年生。初恋グミは優しい味でした。

学食を食べ終えて、美術室までも5人で行った。

「住田。袖にきんぴらごぼうが付いてるぞ。どうしたらそんなところに付くんだ、まったく」

ため息を着きながら、優征くんは住田くんの袖についたきんぴらごぼうを取ってあげていた。

「あ、ありがとう」

少しだけ怯えながら、でものんびりと言う住田くんに、少しだけ胸がピリッとした。優征くんは元々優しい人なのだ。僕にも優しいのだから。知っていたはずなのに、優しいところを見るのは嬉しいのに、なんでこんな気持ちになるのだろう。

美術室の扉を開けてくれたのは優征くんで、僕たち4人が入るまで、扉をずっと抑えていてくれた。ほら、みんなに優しい。もう大丈夫。胸は痛まない。

「飛田やっさしー」

前野くんはニヤニヤと言う。

「うん、知ってる」

「うわ、喜べよ」

前野くんが引いた顔をしたら、優征くんはフッと笑った。

自分の席に座って、優征くんと向かい合わせになる。ずっと取り組んできたデッサンの授業も、今日でおしまいだった。僕は“強さ”を心の中で唱えながら、優征くんをじっと見つめた。優征くんは、僕の顔に狂いがないか、相変わらず鉛筆で緻密に計測して描き写している。

しばらく観察していて思いついたのは、文化祭で僕の気持ちを代弁してくれた優征くんの姿だった。自分の気持ちを表現することを怖がっていた僕のために、悪者になってくれた。

僕は深呼吸をして、目元の輪郭を強く引いた。人のために怒れる優征くんのこの強い目が、僕は好きだ。

よし、できた。そう思ってデッサン全体を見ていた時、美術の本田先生に声をかけられた。

「あら、いい感じに仕上がったわね。ちゃんと強くて優しい印象になったわ。これが日下くんから見た飛田くんなのね」

「はい! ありがとうございます! 」

僕は先生に笑顔を向けて、デッサンを保護するスプレー、フィキサチーフをもらいに行った。