文化祭の後は、文化祭実行委員会によるキャンプファイヤーだった。午後6時。11月後半の、夜に向かう寒さの中で、真ん中の焚き火は優しい。全校生徒と一部の先生が校庭に集まって、焚き火に揺られていた。僕たちはまだ衣装のままだ。
実行委員長である2年生の先輩が特設ステージの上に立っていた。
「それでは皆さんお待ちかね、クラスごとの売上トップの発表です! トップ3には学校から商品がでます! 」
ドゥルルルル、とお馴染みの音が流れた。バンド部の人によるドラムロールだ。
「第1位は、1年1組! 前野くんのクラスです! 前野くん、代表して前へ! 」
「やったー!! みんな! 」
左隣にいた前野くんが、僕に飛びついた。右隣にいた優征くんが、「おい! 」と跳ね除けようとしたが、前野くんは優征くんの肩までがっちりと掴んだ。みんなもワーッと肩を組み合って、喜びを讃えあった。結局優征くんも、一緒に笑っていた。
「1年1組サイコー! 日下! 澤! お前らのおかげだ! 」
前野くんの掛け声で、僕と澤くんは胴上げされた。
「葵! 」
まさかの一番乗りで僕を担ぎ上げたのは、優征くんだった。風見くんや住田くん、もちろん前野くんも僕を一緒に夕空に放った。
「え?! ちょっと! 」
ふわりと浮く感覚が怖くて強ばる。みんなはちゃんとキャッチしてくれているけれど。
「葵! 」
でも優征くんがあまりに笑顔だったから、だんだん僕も楽しくなってきた。身を任せると、執事服の裾が風に流れてふわふわと僕を包んだ。
「スカートの中が見える! 」
隣を見ると、同じように澤くんが担ぎ上げられていた。メイド服を着て目を白黒させている澤くんを、佐藤くんたちが胴上げしている。目が合い、僕が微笑むと、澤くんも笑ってくれた。
先生たちが集っていた端っこから、佐合先生が笑いながら登場した。
「お前ら、いつまでそうしてるんだ! 実行委員長の谷が困ってるから、早く前に出ろ! 凛輝ー! 」
佐合先生まで、まだ執事服だった。みんなから「おっさんのコスプレ」とからかわれていた佐合先生の執事姿は、けっこう似合っていた。大人の余裕、みたいなものがあると思う。
「先生!! 俺たちやったよ! 」
前野くんは輪から離れて、佐合先生の首にぶら下がるように抱きついた。それを合図かのように、胴上げは止んだ。
「うおっ! やめろ! 殺す気かよ! 」
佐合先生があしらうと、全校生徒から爆笑が起こった。
「佐合! なんだそのカッコ! 」
どこからか声が飛ぶ。たぶん、上級生だろう。
「カッコイイだろ! 俺が決めたんだー! 」
前野くんは空に向かって叫んだ。それから、佐合先生の腕を引っ張った。
「先生! 一緒に前行こ! 」
「なんでだよ! 風見と行け! 」
そう言いながらも、佐合先生は引っ張られて行った。
前野くんはステージに上がり、実行委員長の前に立つと、堂々と手を挙げた。
「はい!1位の1年1組です! 学食券ください! 」
校庭のみんなが笑う。実行委員長も笑いながら言った。
「1年1組おめでとう! 君たちのクラスが売上1位です! 売上だけじゃなくて、みんなの個性あふれる衣装、細やかな接客も素晴らしかったと来場者アンケートにあったぞ! ご褒美の学食券です! 」
トロフィーと学食券が付与されると、拍手が湧き上がった。
「1年1組、たくさん食べるぞー! 」
「「「うぉー!! 」」」
前野くんに、クラスのみんなで片手をあげた。
「えー、では続いてはキャンプファイヤーの時間です。みんな、ノってけー! 」
実行委員長がマイクを突き上げて、全校生徒も「ウォー! 」と声を上げた。ステージから帰ってきた前野くんと佐合先生を、風見くんや佐藤くんが揉みくちゃにする。前野くんは嬉しそうで、佐合先生もなんだかんだそれを受け入れていた。
SNSで流行っているらしい曲が流れて、ステージに、その曲のダンス映像が大映しになった。流行に疎い僕でもこの曲を知っていた。メイド執事グミパーティー喫茶のBGMとして、さんざん流れていたからだ。みんなは即座に踊り出した。軽やかですごい。
僕は少しまごつきながら踊っていると、ペアダンスのところで、隣にいた優征くんに手を取られた。
「俺と踊ろう」
ぎゅ、と大きい手に握られて、ドキドキした。転校初日に自転車の後ろに乗せてもらって、腰に手を回した時は、大してドキドキなんてしなかったのに。
手を離して後ろにターンする振り付けで、足がもつれて転びそうになった。
「大丈夫? 」
すかさず優征くんが体を支えてくれた。抱きしめるみたいな体勢だ。
「ご、ごめん! 」
「全然」
慌てて離れようとするが、ぎゅ、と抱きしめられている気がする。気のせい……だよね?
はしゃいで肩を組んでいる子達もいるから、密着してても特に目立ってはいないと思う。前にいる前野くんなんて、ダンスを知らないと言う佐合先生にちょっかいをかけ続けているし。
「も、もう平気だよ」
「そう? 残念」
残念?! 残念ってなに?!
その後のダンスでも、手が触れる度に僕は意識してしまった。だって優征くんが毎回嬉しそうにするから。
実行委員長である2年生の先輩が特設ステージの上に立っていた。
「それでは皆さんお待ちかね、クラスごとの売上トップの発表です! トップ3には学校から商品がでます! 」
ドゥルルルル、とお馴染みの音が流れた。バンド部の人によるドラムロールだ。
「第1位は、1年1組! 前野くんのクラスです! 前野くん、代表して前へ! 」
「やったー!! みんな! 」
左隣にいた前野くんが、僕に飛びついた。右隣にいた優征くんが、「おい! 」と跳ね除けようとしたが、前野くんは優征くんの肩までがっちりと掴んだ。みんなもワーッと肩を組み合って、喜びを讃えあった。結局優征くんも、一緒に笑っていた。
「1年1組サイコー! 日下! 澤! お前らのおかげだ! 」
前野くんの掛け声で、僕と澤くんは胴上げされた。
「葵! 」
まさかの一番乗りで僕を担ぎ上げたのは、優征くんだった。風見くんや住田くん、もちろん前野くんも僕を一緒に夕空に放った。
「え?! ちょっと! 」
ふわりと浮く感覚が怖くて強ばる。みんなはちゃんとキャッチしてくれているけれど。
「葵! 」
でも優征くんがあまりに笑顔だったから、だんだん僕も楽しくなってきた。身を任せると、執事服の裾が風に流れてふわふわと僕を包んだ。
「スカートの中が見える! 」
隣を見ると、同じように澤くんが担ぎ上げられていた。メイド服を着て目を白黒させている澤くんを、佐藤くんたちが胴上げしている。目が合い、僕が微笑むと、澤くんも笑ってくれた。
先生たちが集っていた端っこから、佐合先生が笑いながら登場した。
「お前ら、いつまでそうしてるんだ! 実行委員長の谷が困ってるから、早く前に出ろ! 凛輝ー! 」
佐合先生まで、まだ執事服だった。みんなから「おっさんのコスプレ」とからかわれていた佐合先生の執事姿は、けっこう似合っていた。大人の余裕、みたいなものがあると思う。
「先生!! 俺たちやったよ! 」
前野くんは輪から離れて、佐合先生の首にぶら下がるように抱きついた。それを合図かのように、胴上げは止んだ。
「うおっ! やめろ! 殺す気かよ! 」
佐合先生があしらうと、全校生徒から爆笑が起こった。
「佐合! なんだそのカッコ! 」
どこからか声が飛ぶ。たぶん、上級生だろう。
「カッコイイだろ! 俺が決めたんだー! 」
前野くんは空に向かって叫んだ。それから、佐合先生の腕を引っ張った。
「先生! 一緒に前行こ! 」
「なんでだよ! 風見と行け! 」
そう言いながらも、佐合先生は引っ張られて行った。
前野くんはステージに上がり、実行委員長の前に立つと、堂々と手を挙げた。
「はい!1位の1年1組です! 学食券ください! 」
校庭のみんなが笑う。実行委員長も笑いながら言った。
「1年1組おめでとう! 君たちのクラスが売上1位です! 売上だけじゃなくて、みんなの個性あふれる衣装、細やかな接客も素晴らしかったと来場者アンケートにあったぞ! ご褒美の学食券です! 」
トロフィーと学食券が付与されると、拍手が湧き上がった。
「1年1組、たくさん食べるぞー! 」
「「「うぉー!! 」」」
前野くんに、クラスのみんなで片手をあげた。
「えー、では続いてはキャンプファイヤーの時間です。みんな、ノってけー! 」
実行委員長がマイクを突き上げて、全校生徒も「ウォー! 」と声を上げた。ステージから帰ってきた前野くんと佐合先生を、風見くんや佐藤くんが揉みくちゃにする。前野くんは嬉しそうで、佐合先生もなんだかんだそれを受け入れていた。
SNSで流行っているらしい曲が流れて、ステージに、その曲のダンス映像が大映しになった。流行に疎い僕でもこの曲を知っていた。メイド執事グミパーティー喫茶のBGMとして、さんざん流れていたからだ。みんなは即座に踊り出した。軽やかですごい。
僕は少しまごつきながら踊っていると、ペアダンスのところで、隣にいた優征くんに手を取られた。
「俺と踊ろう」
ぎゅ、と大きい手に握られて、ドキドキした。転校初日に自転車の後ろに乗せてもらって、腰に手を回した時は、大してドキドキなんてしなかったのに。
手を離して後ろにターンする振り付けで、足がもつれて転びそうになった。
「大丈夫? 」
すかさず優征くんが体を支えてくれた。抱きしめるみたいな体勢だ。
「ご、ごめん! 」
「全然」
慌てて離れようとするが、ぎゅ、と抱きしめられている気がする。気のせい……だよね?
はしゃいで肩を組んでいる子達もいるから、密着してても特に目立ってはいないと思う。前にいる前野くんなんて、ダンスを知らないと言う佐合先生にちょっかいをかけ続けているし。
「も、もう平気だよ」
「そう? 残念」
残念?! 残念ってなに?!
その後のダンスでも、手が触れる度に僕は意識してしまった。だって優征くんが毎回嬉しそうにするから。
