冷たいコンクリートの無機質な資料室の中で、佐藤刑事は鑑識の刑事と、顔を突き合わせていた。手元には証拠品として押収された、イワンが化学室で作った「びっくり箱」がある。
「本当に、これ、中学生が作ったんですか?」
という鑑識の怪訝な顔に、佐藤は答える。
「中学生に化けた『何か』だ。説明を頼む」
彼は一斗缶につけられた仕掛けを説明しだす。
「まずは驚くのはこのセンサーですね。特定の周波数成分に反応するようです。特定の人物の、声紋……といったほうが早いでしょうか」
「科学部の部長くんの話だと、直前に声を発したのは『有栖川美知』さんだった、という話だ。ほら、これ。件の美知さんの音声。学校で採ってきた」
とスマホのレコーダーを再生する。
『探偵研究部でーす。ぜひ、ビラだけでももらってくださーい』
はつらつとした明るい声だ。まさか、音声を採られているなんて微塵も疑ってはいなかったろう。
そして、その声に反応して、ピーピー、とセンサーが反応して、ギュルルル……と駆動でモーターが回りだす。
「ビンゴか」
「それから、この絵の仕組み。絵具の表面にはあらかじめタンニンが混ぜられていて、酸化鉄を加えることで、血文字のようにどす黒く変化する……。ずいぶん、用意周到な犯人ですね。彼からの供述は?」
「まだだ。まるで人が変わったように、静かに、黙秘を続けている。有栖川のお嬢ちゃんも、奴の素顔を写真で見る限りは、『本人のようで、本人ではないかもしれない』と曖昧なことを言っているしな。まあ、七歳の頃の記憶なんて、あてにならないからな。――それよりも、なぜ上は、奴の護送を許可しなかったんだ?」
「さあ、鑑識ではわかりかねますよ。そればかりは……」
「なんか、裏がありそうだな。この事件」
佐藤は横に倒された「びっくり箱」を眺めながら言う。
キュルキュルと、車輪が動き続けていた――
幕間 了
「本当に、これ、中学生が作ったんですか?」
という鑑識の怪訝な顔に、佐藤は答える。
「中学生に化けた『何か』だ。説明を頼む」
彼は一斗缶につけられた仕掛けを説明しだす。
「まずは驚くのはこのセンサーですね。特定の周波数成分に反応するようです。特定の人物の、声紋……といったほうが早いでしょうか」
「科学部の部長くんの話だと、直前に声を発したのは『有栖川美知』さんだった、という話だ。ほら、これ。件の美知さんの音声。学校で採ってきた」
とスマホのレコーダーを再生する。
『探偵研究部でーす。ぜひ、ビラだけでももらってくださーい』
はつらつとした明るい声だ。まさか、音声を採られているなんて微塵も疑ってはいなかったろう。
そして、その声に反応して、ピーピー、とセンサーが反応して、ギュルルル……と駆動でモーターが回りだす。
「ビンゴか」
「それから、この絵の仕組み。絵具の表面にはあらかじめタンニンが混ぜられていて、酸化鉄を加えることで、血文字のようにどす黒く変化する……。ずいぶん、用意周到な犯人ですね。彼からの供述は?」
「まだだ。まるで人が変わったように、静かに、黙秘を続けている。有栖川のお嬢ちゃんも、奴の素顔を写真で見る限りは、『本人のようで、本人ではないかもしれない』と曖昧なことを言っているしな。まあ、七歳の頃の記憶なんて、あてにならないからな。――それよりも、なぜ上は、奴の護送を許可しなかったんだ?」
「さあ、鑑識ではわかりかねますよ。そればかりは……」
「なんか、裏がありそうだな。この事件」
佐藤は横に倒された「びっくり箱」を眺めながら言う。
キュルキュルと、車輪が動き続けていた――
幕間 了

