マタロウがまた朝礼台から拡声器で声を上げる。
「さあ、皆の者、これが最後だ。その試練は体力。『しっぽとり鬼ごっこ』だ。グラウンドをすべて使っての鬼ごっこ。大乱闘スマッシュブラザーズだ。みな、しっぽに見立てた部カラーの鉢巻きの準備はいいか?
これは一度でも取られたら負け。取られたものは場外に出てもらう。とにかく走り回って逃げ切って、相手の尻尾を奪えば良い。奪った尻尾の点数が加算される。
そして、最後にグラウンドに残っていた者にも、三〇〇ポイントのボーナスだ。一気に逆転を狙えるぞ!」
(俺の、一番得意分野だ)
小川はそう思った。小川は、靴ひもをぐっと締めなおした。
探偵研究部は、灰色のはちまきだ。――灰色の脳細胞だからだそうだ。
「パン!」という乾いた合図と共に、グラウンドに砂埃が舞った。
大人数の部活は、円陣を組んだりして、大将の尻尾を温存する作戦に出ている。
一方人数の少ない探偵研究部は、それらに近づかず、機動力を生かし、単独で動いている部活の穴をねらって尻尾をとる作戦に出る。
未知をおとりにして、誘われた奴の尻尾を平屋は狙っていく。その間に、小川は俊足を生かして、一人で動いている尻尾を仕留めていく。
しかし、時間が経つうちに、体の小さい未知や平屋の尻尾は奪われた。
負けじと小川は、他の部活の尻尾を奪ってポイントを稼いで行った。
グラウンド中央では、サッカー部、柔道部、バスケ部と運動部男子の三つ巴の乱戦だったが、結局すべての尻尾が奪われていた。
そして、なんと最後に残ったのは、まさかの探偵研究部とオカルト研究会だった。
高杉のほうも、自分の尻尾を守りつつ漁夫の利を狙い、生き残っていたらしい。
最終決戦は、代表者である小川と高杉の一騎打ち。
ジリジリと間合いを詰める。
もはやフィジカルではない、精神攻撃へと移行する。
「高杉! お前! いまだにブロッコリーとカリフラワーの区別つかないのかよ!」
「小川! お前が家庭科で作ったドラゴンエプロンして登校したこと、忘れてないぜ!」
「リコーダーで低い音が出せない!」
「ギターがへたくそ!」
「ピーマンが食べれない!」
「給食の牛乳飲み過ぎ!」
「川によく落ちてた!」
「バッタが触れない!」
どんどん低レベルになってくる。
幼稚園時代までさかのぼる醜い罵り合いを繰り広げた。
平屋と未知は呆れ顔、智子は目を輝かせている。
そこで、たまらず審判のマタロウが間に入った!
「おいこら! 個人攻撃の喧嘩はルール違反だ! いい加減にしろ、お前たち!」
マタロウの叫びに、二人は我に返った。
「高杉……」
「小川……」
二人は顔を見合わせ、同時に吹き出した。
「あはははは! なんだよ、お前!」
「くっくっく……。だっさ! お前こそ、なにやってんだよ!」
二人は、笑いながら互いの肩をバシバシと叩き合った。
「……勝負は、同点だ!」
くるりとマタロウを振り返った小川と高杉は、吹っ切れたようにそう叫んだ。
そうして、部活対抗デスマッチのすべての競技が終わった。
成瀬今日子が掲示板にチョークで総合点を書いていく。
【最終結果】
探偵研究部:二三〇点+一五〇(一〇点×一五しっぽ)+一五〇点※ボーナス
オカルト研究会:一五〇点+二三〇(一〇点×二三しっぽ)+一五〇点※ボーナス
小川と高杉は、
「総合点まで同点かよ!」
と喜んだが、マタロウが掲示板の前にやってきて、
探偵研究部:二三〇点+一五〇(一〇点×一五しっぽ)+一五〇点※ボーナス
―(マイナス)五〇〇点
オカルト研究会:一五〇点+二三〇(一〇点×二三しっぽ)+一五〇点※ボーナス
―(マイナス)五〇〇点
と書き加えた。
「先ほどのケンカによるルール違反で、減点だ! 探偵研究部、オカルト研究会。得点、三〇点で、仲良く最下位!」
「そ、そんな――!!!」
小川、平屋、未知。高杉、智子の悲痛な声が響いた。
******
後日談
探偵研究部と、オカルト研究会は、仲良く部室を半分に分けることにした。
部室の真ん中にピンクの養生テープが貼られていく。
「ほら、やっぱり狭いだろ!」
「ちょっと、黒ミサするからどけてよ!」
「すんな! そんなもの!」
「えー! あのデータ消しちゃった!?」
「燃やすぞ!」
「燃やすな! 火気厳禁だろ!」
やっぱり、喧嘩は絶えない。
第二話 部室争奪戦・了
「さあ、皆の者、これが最後だ。その試練は体力。『しっぽとり鬼ごっこ』だ。グラウンドをすべて使っての鬼ごっこ。大乱闘スマッシュブラザーズだ。みな、しっぽに見立てた部カラーの鉢巻きの準備はいいか?
これは一度でも取られたら負け。取られたものは場外に出てもらう。とにかく走り回って逃げ切って、相手の尻尾を奪えば良い。奪った尻尾の点数が加算される。
そして、最後にグラウンドに残っていた者にも、三〇〇ポイントのボーナスだ。一気に逆転を狙えるぞ!」
(俺の、一番得意分野だ)
小川はそう思った。小川は、靴ひもをぐっと締めなおした。
探偵研究部は、灰色のはちまきだ。――灰色の脳細胞だからだそうだ。
「パン!」という乾いた合図と共に、グラウンドに砂埃が舞った。
大人数の部活は、円陣を組んだりして、大将の尻尾を温存する作戦に出ている。
一方人数の少ない探偵研究部は、それらに近づかず、機動力を生かし、単独で動いている部活の穴をねらって尻尾をとる作戦に出る。
未知をおとりにして、誘われた奴の尻尾を平屋は狙っていく。その間に、小川は俊足を生かして、一人で動いている尻尾を仕留めていく。
しかし、時間が経つうちに、体の小さい未知や平屋の尻尾は奪われた。
負けじと小川は、他の部活の尻尾を奪ってポイントを稼いで行った。
グラウンド中央では、サッカー部、柔道部、バスケ部と運動部男子の三つ巴の乱戦だったが、結局すべての尻尾が奪われていた。
そして、なんと最後に残ったのは、まさかの探偵研究部とオカルト研究会だった。
高杉のほうも、自分の尻尾を守りつつ漁夫の利を狙い、生き残っていたらしい。
最終決戦は、代表者である小川と高杉の一騎打ち。
ジリジリと間合いを詰める。
もはやフィジカルではない、精神攻撃へと移行する。
「高杉! お前! いまだにブロッコリーとカリフラワーの区別つかないのかよ!」
「小川! お前が家庭科で作ったドラゴンエプロンして登校したこと、忘れてないぜ!」
「リコーダーで低い音が出せない!」
「ギターがへたくそ!」
「ピーマンが食べれない!」
「給食の牛乳飲み過ぎ!」
「川によく落ちてた!」
「バッタが触れない!」
どんどん低レベルになってくる。
幼稚園時代までさかのぼる醜い罵り合いを繰り広げた。
平屋と未知は呆れ顔、智子は目を輝かせている。
そこで、たまらず審判のマタロウが間に入った!
「おいこら! 個人攻撃の喧嘩はルール違反だ! いい加減にしろ、お前たち!」
マタロウの叫びに、二人は我に返った。
「高杉……」
「小川……」
二人は顔を見合わせ、同時に吹き出した。
「あはははは! なんだよ、お前!」
「くっくっく……。だっさ! お前こそ、なにやってんだよ!」
二人は、笑いながら互いの肩をバシバシと叩き合った。
「……勝負は、同点だ!」
くるりとマタロウを振り返った小川と高杉は、吹っ切れたようにそう叫んだ。
そうして、部活対抗デスマッチのすべての競技が終わった。
成瀬今日子が掲示板にチョークで総合点を書いていく。
【最終結果】
探偵研究部:二三〇点+一五〇(一〇点×一五しっぽ)+一五〇点※ボーナス
オカルト研究会:一五〇点+二三〇(一〇点×二三しっぽ)+一五〇点※ボーナス
小川と高杉は、
「総合点まで同点かよ!」
と喜んだが、マタロウが掲示板の前にやってきて、
探偵研究部:二三〇点+一五〇(一〇点×一五しっぽ)+一五〇点※ボーナス
―(マイナス)五〇〇点
オカルト研究会:一五〇点+二三〇(一〇点×二三しっぽ)+一五〇点※ボーナス
―(マイナス)五〇〇点
と書き加えた。
「先ほどのケンカによるルール違反で、減点だ! 探偵研究部、オカルト研究会。得点、三〇点で、仲良く最下位!」
「そ、そんな――!!!」
小川、平屋、未知。高杉、智子の悲痛な声が響いた。
******
後日談
探偵研究部と、オカルト研究会は、仲良く部室を半分に分けることにした。
部室の真ん中にピンクの養生テープが貼られていく。
「ほら、やっぱり狭いだろ!」
「ちょっと、黒ミサするからどけてよ!」
「すんな! そんなもの!」
「えー! あのデータ消しちゃった!?」
「燃やすぞ!」
「燃やすな! 火気厳禁だろ!」
やっぱり、喧嘩は絶えない。
第二話 部室争奪戦・了

