放課後、未知はまだほっぺたを手の甲でぬぐっている。高杉に触られたのがよっぽど嫌だったらしい。
「アレが世の中で言う、イケメンって奴ですか!? 馴れ馴れしくて気持ち悪いです!」
未知は目を見開いて頬をふくらましてはっきり言った。
平屋はそんな未知を焚き付けるように言う。
「いや、未知。あれはイケメンじゃない。なんちゃってイケメンって言うヤツで、つまり、似て非なるものだ」
「似て非なるもの……」
未知が小首をかしげるので、平屋はタブレットで「海の生物」を開く。
「ヒラメとカレイがいるだろ。本物のイケメンはヒラメ。アイツはカレイだ。市場価値に雲泥の差がある。アイツはペラペラと自分をアピールするけれど、それは二流のなんちゃってのすること。本物のイケメンって言うのは、黙ってても、人を惹きつけるもんだ。例えば……」
そこまで言って、ちらりと平屋は小川を見るが、小川の方は何故かダンベル体操をしていた。
――まあ、筋肉自慢の小川先輩も、ちょっと違うかな。と平屋は苦笑いする。
すると、バタバタバタバタ! と廊下からこちらに向かってくる騒がしい足音がした。
ガラッと扉を開けて、探偵研究部の部室に、一人の女子生徒が高めのツインテールをゆらしながら駆け込んできた。
「ずるいぞ、未知! ハーレムは許さん!」
そう叫びながら入ってきたのは、未知のクラスメイトの智子だった。
そして、彼女の後ろには、朝のロン毛のチャラそうな上級生、高杉の姿もある。
「おいおい、智子くん。そんな大声出すなよ」
高杉は、またしても謎のポーズをつけたまんま呆れたような表情で智子をなだめるが、智子は未知に詰め寄っていく。
「ちょっと待って! 探偵部に入ったなんて聞いてないんですけど! 小川・平屋コンビの部活とか、推し活のガチ宝庫じゃん! あんな顔面偏差値高めの二人に、ウチら一年は箱推しでメンタル削られてんのにさぁ。観賞用にって、あえて入部してないってのに!! そこへ秒で入り込むとか、マジでありえないんだけど! なんで未知だけ、ちゃっかり神ポジにいるわけ!?」
智子は未知に向かって、不満そうに口を尖らせる。
「ガチ? 何を削るって? 箱……神? 一体何のこと?」
未知は、マシンガンギャルトークが知らない外語のようで、理解が追いつかずきょとんとしていた。
小川が高杉に近寄る。
「お前、今朝からなんなんだよ。やけにからんでくるよな」
「そうですよ。一年生まで引き連れて、一体何の用ですか!」
平屋がジト目でにらむと、高杉は、
「よくぞ聞いてくれた!」
と笑い胸を張る。
「俺は知っての通り、オカルト研究会の会長だ。探偵研究部と同じく、万年部員不足の弱小同好会さ。今年も俺一人の会員か……と落ち込んでいる俺に、天使は微笑んだ。なんと、一年生が入会希望って来てくれたんだ! それが、この智子ちゃん。しかもそこの未知ちゃんとクラスメイト! 運命じゃない? 運命じゃん。だったら二人で入った方がいいんじゃない?」
高杉は、大げさにポーズを取りながら言った。
「未知! 私、オカルト研究会に入る!」
智子は、そう叫び、未知の手を掴む。
「ねえ、だからさ、一緒に入ろうよ――」
未知は同性のクラスメイトを無下にすることもできず、
「ええ……?」
とおろおろとする。
平屋は苦々しく、
「そうきたか。部活動規定の『本人の意思を無視した勧誘は厳に慎むべし』こいつを逆手にとったな」
とつぶやいた。
「おい。確か、お前のところの『オカルト研究会』って、あんまりにも弱小で、部室がないんじゃなかったか? 一年生抱えて、そんなんでまともな活動できるのかよ?」
心配そうに小川が逆に尋ねた。
小川のお節介は計算通りの高杉は、ニヤリと笑い、探偵研究部の部室をぐるりと三六〇度見渡した。
「そう! 我々の欠点はそこなんだよ! 我々の部活には、部室がない!」
(他にも欠点ありそうだけどな)
というツッコミを脇に置いて、小川と平屋は、嫌な予感しかしない。
「ないから、ここを譲れ!」
高杉の断言に、
「「「は、はあ――!!!?」」」
と、小川、未知、平屋は盛大に声を上げた。
小川は怒りを爆発させる。
「おいこら高杉、調子に乗るなよ。何だってこの部室は、歴史ある俺たち探偵研究部の聖域だぞ!」
「そんなの誰が決めたよ! ここの学校の生徒活動の為の部室だ!! だったら俺たちにも、権利がある!!」
「なんだと!」
小川の沸点超えを心配して、平屋がおろおろしだした。
未知も、冷静さを欠いた小川がろくな判断をしないのをすでに知っている。
それを知っているかのように、高杉は煽った。
「部室が欲しいなら、俺と勝負しろ!」
高杉はそう言って、小川に挑戦的な眼差しを向けた。
「よーし、いいだろう」
小川が腕まくりをしたので、平屋と未知は天を仰いだ。
分かりやすい挑発に乗ってしまったのだ。
「アレが世の中で言う、イケメンって奴ですか!? 馴れ馴れしくて気持ち悪いです!」
未知は目を見開いて頬をふくらましてはっきり言った。
平屋はそんな未知を焚き付けるように言う。
「いや、未知。あれはイケメンじゃない。なんちゃってイケメンって言うヤツで、つまり、似て非なるものだ」
「似て非なるもの……」
未知が小首をかしげるので、平屋はタブレットで「海の生物」を開く。
「ヒラメとカレイがいるだろ。本物のイケメンはヒラメ。アイツはカレイだ。市場価値に雲泥の差がある。アイツはペラペラと自分をアピールするけれど、それは二流のなんちゃってのすること。本物のイケメンって言うのは、黙ってても、人を惹きつけるもんだ。例えば……」
そこまで言って、ちらりと平屋は小川を見るが、小川の方は何故かダンベル体操をしていた。
――まあ、筋肉自慢の小川先輩も、ちょっと違うかな。と平屋は苦笑いする。
すると、バタバタバタバタ! と廊下からこちらに向かってくる騒がしい足音がした。
ガラッと扉を開けて、探偵研究部の部室に、一人の女子生徒が高めのツインテールをゆらしながら駆け込んできた。
「ずるいぞ、未知! ハーレムは許さん!」
そう叫びながら入ってきたのは、未知のクラスメイトの智子だった。
そして、彼女の後ろには、朝のロン毛のチャラそうな上級生、高杉の姿もある。
「おいおい、智子くん。そんな大声出すなよ」
高杉は、またしても謎のポーズをつけたまんま呆れたような表情で智子をなだめるが、智子は未知に詰め寄っていく。
「ちょっと待って! 探偵部に入ったなんて聞いてないんですけど! 小川・平屋コンビの部活とか、推し活のガチ宝庫じゃん! あんな顔面偏差値高めの二人に、ウチら一年は箱推しでメンタル削られてんのにさぁ。観賞用にって、あえて入部してないってのに!! そこへ秒で入り込むとか、マジでありえないんだけど! なんで未知だけ、ちゃっかり神ポジにいるわけ!?」
智子は未知に向かって、不満そうに口を尖らせる。
「ガチ? 何を削るって? 箱……神? 一体何のこと?」
未知は、マシンガンギャルトークが知らない外語のようで、理解が追いつかずきょとんとしていた。
小川が高杉に近寄る。
「お前、今朝からなんなんだよ。やけにからんでくるよな」
「そうですよ。一年生まで引き連れて、一体何の用ですか!」
平屋がジト目でにらむと、高杉は、
「よくぞ聞いてくれた!」
と笑い胸を張る。
「俺は知っての通り、オカルト研究会の会長だ。探偵研究部と同じく、万年部員不足の弱小同好会さ。今年も俺一人の会員か……と落ち込んでいる俺に、天使は微笑んだ。なんと、一年生が入会希望って来てくれたんだ! それが、この智子ちゃん。しかもそこの未知ちゃんとクラスメイト! 運命じゃない? 運命じゃん。だったら二人で入った方がいいんじゃない?」
高杉は、大げさにポーズを取りながら言った。
「未知! 私、オカルト研究会に入る!」
智子は、そう叫び、未知の手を掴む。
「ねえ、だからさ、一緒に入ろうよ――」
未知は同性のクラスメイトを無下にすることもできず、
「ええ……?」
とおろおろとする。
平屋は苦々しく、
「そうきたか。部活動規定の『本人の意思を無視した勧誘は厳に慎むべし』こいつを逆手にとったな」
とつぶやいた。
「おい。確か、お前のところの『オカルト研究会』って、あんまりにも弱小で、部室がないんじゃなかったか? 一年生抱えて、そんなんでまともな活動できるのかよ?」
心配そうに小川が逆に尋ねた。
小川のお節介は計算通りの高杉は、ニヤリと笑い、探偵研究部の部室をぐるりと三六〇度見渡した。
「そう! 我々の欠点はそこなんだよ! 我々の部活には、部室がない!」
(他にも欠点ありそうだけどな)
というツッコミを脇に置いて、小川と平屋は、嫌な予感しかしない。
「ないから、ここを譲れ!」
高杉の断言に、
「「「は、はあ――!!!?」」」
と、小川、未知、平屋は盛大に声を上げた。
小川は怒りを爆発させる。
「おいこら高杉、調子に乗るなよ。何だってこの部室は、歴史ある俺たち探偵研究部の聖域だぞ!」
「そんなの誰が決めたよ! ここの学校の生徒活動の為の部室だ!! だったら俺たちにも、権利がある!!」
「なんだと!」
小川の沸点超えを心配して、平屋がおろおろしだした。
未知も、冷静さを欠いた小川がろくな判断をしないのをすでに知っている。
それを知っているかのように、高杉は煽った。
「部室が欲しいなら、俺と勝負しろ!」
高杉はそう言って、小川に挑戦的な眼差しを向けた。
「よーし、いいだろう」
小川が腕まくりをしたので、平屋と未知は天を仰いだ。
分かりやすい挑発に乗ってしまったのだ。

