2026年5月20日(火)
「どのくらい切るの? ——ボブ? じゃあ、ヘアドネーションしなくちゃね」
母はそう言って、楽しそうに笑いました。どうしてかうきうきとして、帰るとすぐにわたしの髪にメジャーを当ててくれたのです。
「午後ちゃん、髪切るの! 絶対似合うよ。私見えたよ、ボブカットの午後ちゃん」
そう伝えてくれたのは、通信校のお友達です。まだ会ったことはありませんが、にっこりと目を細めて笑う姿が、わたしにも見えるようでした。
通信制高校で生活していると、ときどきほっぺたをつねってしまいます。顔も知らない相手から「髪を切りたいんだけど……」なんて言われたら、きっと困るでしょう。けれどみんないやな顔ひとつせず——顔は見えませんが——わたしのことを応援してくれるのです。きっと今が人生で、いちばん楽しいとき。わたしは昨日見た夢を思い出すかのように、そう思うのです。
パソコンを前にぼんやりと座っていると、開いた窓の外からチリン、チリンと音がしました。熊よけの鈴の音です。近所の学校は下校時間なのでしょう。
わたしはなんだかそわそわとして、立ち上がりました。この音には、いつもこうです。熊よけなのに、人間をそわそわさせてどうするのでしょう。
立ったついでにくるりと後ろを向き、カレンダーをじっと見つめます。母が予約をとってくれたのは、今週末の土曜日でした。三つ指を降り、わたしはこくんとうなずきます。
そうして今度は小走りに、洗面所まで。ひとつにまとめていた髪をほどいて、毛先を持ち上げます。ボブカットのまねっこです。——似合うかしら? わたしは首をかしげて、リビングへきびすを返しました。
「どのくらい切るの? ——ボブ? じゃあ、ヘアドネーションしなくちゃね」
母はそう言って、楽しそうに笑いました。どうしてかうきうきとして、帰るとすぐにわたしの髪にメジャーを当ててくれたのです。
「午後ちゃん、髪切るの! 絶対似合うよ。私見えたよ、ボブカットの午後ちゃん」
そう伝えてくれたのは、通信校のお友達です。まだ会ったことはありませんが、にっこりと目を細めて笑う姿が、わたしにも見えるようでした。
通信制高校で生活していると、ときどきほっぺたをつねってしまいます。顔も知らない相手から「髪を切りたいんだけど……」なんて言われたら、きっと困るでしょう。けれどみんないやな顔ひとつせず——顔は見えませんが——わたしのことを応援してくれるのです。きっと今が人生で、いちばん楽しいとき。わたしは昨日見た夢を思い出すかのように、そう思うのです。
パソコンを前にぼんやりと座っていると、開いた窓の外からチリン、チリンと音がしました。熊よけの鈴の音です。近所の学校は下校時間なのでしょう。
わたしはなんだかそわそわとして、立ち上がりました。この音には、いつもこうです。熊よけなのに、人間をそわそわさせてどうするのでしょう。
立ったついでにくるりと後ろを向き、カレンダーをじっと見つめます。母が予約をとってくれたのは、今週末の土曜日でした。三つ指を降り、わたしはこくんとうなずきます。
そうして今度は小走りに、洗面所まで。ひとつにまとめていた髪をほどいて、毛先を持ち上げます。ボブカットのまねっこです。——似合うかしら? わたしは首をかしげて、リビングへきびすを返しました。


