『思い出さなければよかったのに』
十万部超えの大ヒットにして、今もなお重版を重ねている私の処女作。
これほどの話題作を、芸能界も事務所もほおっておくわけがない。
あちこちから映画化のオファーが舞い込むと、その中の一つに私の事務所が飛びついた。
『テレビ局がスポンサーで半年後に上映。その後すぐにテレビドラマ化もする予定。監督は人気写真家、成瀬駿』
なんでも、テレビ局のプロデューサーに成瀬先輩みずから持ち込んだ企画だという。
――雄大がどう思うだろう……。
大乗り気な事務所社長とマネージャーを横目に見ながら返事をできずにいると、なんと成瀬先輩本人が事務所に説得にやってきた。
『森口さんが戸惑うのもわかるよ。 君に長年恋心を抱いている僕が監督すると、木崎君が嫌がるかもしれないって思ってるんだろう?』
事務所の応接室。
社長とマネージャーのいる前で、堂々とそう言ってのけたことには驚いたけれど、その後の彼の言葉は十分納得できるものだった。
『映画を撮るのははじめてだけど、カメラで表現するという意味では同じだと思う。君の小説の世界観を損なわずに映像化する自信はあるんだ』
『君たちの恋は、二人を長年見てきた僕だからこそ表現できると思う』
『自分で言うのも何だけど、僕の初監督作品となれば注目を浴びるし、ヒット間違いない。木崎君の作品を更に知ってもらう、いいチャンスだと思わないか?』
説得力のある言葉の数々に、拒否する理由なんてなかった。
何より、雄大の作品を、彼の名前を、皆の記憶に残すことができるのだ。
『わかりました……よろしくお願いします』
こうして映画化の話が進み、クランクインしたタイミングで雄大の写真展が開催されたのだった。
十万部超えの大ヒットにして、今もなお重版を重ねている私の処女作。
これほどの話題作を、芸能界も事務所もほおっておくわけがない。
あちこちから映画化のオファーが舞い込むと、その中の一つに私の事務所が飛びついた。
『テレビ局がスポンサーで半年後に上映。その後すぐにテレビドラマ化もする予定。監督は人気写真家、成瀬駿』
なんでも、テレビ局のプロデューサーに成瀬先輩みずから持ち込んだ企画だという。
――雄大がどう思うだろう……。
大乗り気な事務所社長とマネージャーを横目に見ながら返事をできずにいると、なんと成瀬先輩本人が事務所に説得にやってきた。
『森口さんが戸惑うのもわかるよ。 君に長年恋心を抱いている僕が監督すると、木崎君が嫌がるかもしれないって思ってるんだろう?』
事務所の応接室。
社長とマネージャーのいる前で、堂々とそう言ってのけたことには驚いたけれど、その後の彼の言葉は十分納得できるものだった。
『映画を撮るのははじめてだけど、カメラで表現するという意味では同じだと思う。君の小説の世界観を損なわずに映像化する自信はあるんだ』
『君たちの恋は、二人を長年見てきた僕だからこそ表現できると思う』
『自分で言うのも何だけど、僕の初監督作品となれば注目を浴びるし、ヒット間違いない。木崎君の作品を更に知ってもらう、いいチャンスだと思わないか?』
説得力のある言葉の数々に、拒否する理由なんてなかった。
何より、雄大の作品を、彼の名前を、皆の記憶に残すことができるのだ。
『わかりました……よろしくお願いします』
こうして映画化の話が進み、クランクインしたタイミングで雄大の写真展が開催されたのだった。
