思い出さなければよかったのに

 銀座一丁目にある有名ギャラリーは、開館直後から大勢の人で溢れ返っていた。

 美術館やギャラリーが多く集まる栄えたエリアにあり、地下鉄駅から徒歩一分。交通の便がよく、集客率抜群の好立地。

 ここは日本トップのフィルム会社が、『クオリティの高い様々なジャンルの作品を展示し、写真文化の向上と普及に貢献する』を謳い文句にして、全国五カ所に設置しているフォトサロンの一つだ。

 グレーを基調としたシックな空間。
 可動式の展示スペースを贅沢にも三部屋分ぶち抜きで使用している広い空間に、色とりどりの写真が飾られている。

 写真は風景だったり動物だったり様々だけど、一番多いのは子供の写真だ。

 ガリガリに痩せ細った赤ん坊を背負い、骨と皮だけの手を差し出して物乞いをするインドの少女。
 お供え物の果物が入った大きな籠を頭に乗せて運ぶバリ島の姉弟。

 すべて、若くして亡くなった不世出の写真家、木崎雄大の作品である。

 会場の突き当たり。 メインの一番大きなパネルの前でフラッシュを浴びて微笑んでいるのは、この展示会の主催者の一人であり、このパネルの写真のモデルであり……そして亡くなったカメラマンの恋人でもあった女性……森口彩乃、この私だ。