思い出さなければよかったのに

 透けていく。

 彼の身体の向こう側に、キャンドルの揺らめく灯りが、キッチンが、部屋の壁が見えている。

「嫌だ! 雄大、行かないで!」

 駄目っ! 駄目だよ。
 やっと帰ってきたのに、誕生日のお祝いだってまだなのに。

 忘れろ、忘れろ、忘れてしまえ!
 もう一度すべてを忘れて、私といるためだけに、この場に留まり続ければいい。

 ――だってあなたは、私との約束を果たしに帰ってきてくれたんでしょう?