思い出さなければよかったのに

 信号の変わりばな。
 横断歩道の白いライン。
 立ち尽くす男の子。
 突っ込んでくる車。

 キキーーーッ!

 車の急ブレーキの音。
 地面に散らばる赤い花びら。
 真っ青な空。
 全身を襲う衝撃と痛み。
 道路に散乱する薔薇の花と、車のタイヤに踏みつけられた紺のビロードの指輪ケース。

 最後に脳裏に浮かんだのは、大好きなアイツの……。

「……あや……の…」

 ――彩乃!

 カシャッ! カシャカシャカシャカシャ……

 瞬く閃光。
 そして世界は真っ白い光に包まれた。


 心臓がドクドクする。息が苦しい。頭がガンガンする。
 光がパンッ! と弾けて……ゆっくり目を開けると、そこは懐かしいマンションの部屋。

 ああ、そうか……俺は……。

 俺は……。

「……死んだのか」

 途端に彩乃が両手で顔を覆って号泣した。

 ――ああ、そうなんだ……。

「ごめんな……彩乃」