思い出さなければよかったのに

 ネパールの寺院で少女がガネーシャ像に祈りを捧げる姿を撮ったその写真、『ただ祈る』がニューヨークのコンクールで大賞を受賞したと知ったのは、インドに移って一ヶ月ほど経った頃だった。

 ――やった!

 よかった。アイツの誕生日にギリギリ間にあった。
 受賞発表の式典は来月だけど、まずは約束を果たさなくてはいけない。

 ――そうだ、帰らなきゃ。日本へ、彩乃の待つ、俺たちのマンションへ……。

 そうして俺は飛行機に飛び乗り、喜び勇んで帰ってきたのだった。

 カシャッ、カシャッ、カシャッ!

 次々と瞬くフラッシュ。
 目を瞑ってもなお目蓋を明るく照らす閃光。
 目まぐるしい速さでどんどん切り替わる画面。
 
 カシャッ! カシャカシャッ! カシャッ!

『俺の写真が大賞をとった。帰る』
 インドでスマホに短いメッセージを打ち込む俺。

『おめでとう、待っています』
 彩乃からの返事。

『もうすぐ帰るから』
『うん、待ってる』
 日本の空港でやりとりしたメッセージ。

 ――帰ったら、クサい愛の言葉も、おまえがずっと待っていた言葉も全部まとめて言ってやるからな!