思い出さなければよかったのに

「――彩乃、我が儘を言うのもいい加減になさい」

 さすがに俺にだってわかる。次もまた彩乃の記憶のどこかに飛ばされたんだ。

 でも……今度は何の場面だ? ここはどこなんだ?

「あなたはもう若くないんだし、これからどうにかして仕事の幅を拡げていかなきゃならないのよ。選り好みしている場合じゃないでしょう」

「だけどこのまえの写真集といい、ここまで意図的に先輩とブッキングする必要ないじゃないですか」
「なにを言ってるの。あなたのためなのよ」

「私のためだと思うのなら、これ以上噂になるような仕事の組み方はやめてください。もうこういうの、嫌なんです」
「噂になるようにしてるのよ」

 女の割にはドスの効いた低めの声。
 狐のようにつりあがった目の……。

「社長、そんなのひどいです!」

 ――そう、彩乃のモデル事務所の社長だ!