思い出さなければよかったのに

「──彩乃、とりあえず一度会ってみたら?」
「何言ってるの? お見合いなんて、するわけないでしょ」

 ――えっ、お見合い?

 なんだ、これ?
 俺の記憶じゃない。こんなの俺は知らない。

 これは彩乃と……彩乃の母親、明美さんの声だ。

 彩乃の生温かい涙とともに胸にジワリと沁み込む感情。
 喜び、感動、驚き、怒り、哀しみ、恐れ、不安……。

 それらは奔流のように勢いを増し、次々と俺の中に流れ込んでくる。
 
 ――これは……そうか、彩乃の記憶なんだ。