思い出さなければよかったのに

 好きになるのもセックスするのもアイツだけでいい。
 そして彩乃もきっと、同じように思ってくれているに違いない。

 白いシャツの胸ポケットから写真を取り出して見る。
 そこには俺を見ながら花咲くような笑顔を向けている彩乃がいた。

 二人で写っている写真は写真立てに入れて倉庫の部屋の枕元に飾ってある。
 そしてピンクのビキニを着た彩乃の写真は人目につかないよう手帳に挟んでスーツケースに隠したままだ。

 ――今夜はあの写真のお世話になるとするか……。

 Bカップの胸を無理やり寄せて大きく見せているセクシーポーズの彩乃の写真。

 彩乃にはグラビアの写真なんていらないと言ったけれど、性的な匂いのする場所に立ち寄ったことで、なんだか急にそちらの欲求が昂ぶってきた。

「くっそ……彩乃に会いてぇ〜」

 今すぐ彼女に会って抱きしめてキスしたい。
 一晩中愛し合いたい。滑らかな肌に触れたい。そう強く思う。

 ――だけどまだ……。

 その資格を得るためにも、今ここで日本に逃げ帰るわけにいかないんだ、絶対に。

 俺は彩乃の写真を胸ポケットに仕舞ってポンと軽く叩くと、鉄格子の窓を振り返ることなく店への道を急ぐのだった。