彩乃はクリッとした大きな瞳で可愛らしい顔をしているし、明るくて社交的なため昔から人気者だった。そして高校入学後ダンス部に所属してからは、アイドル並みの騒がれ方をするようになっていた。
俺達は学校でクラスは違うものの登下校が一緒だし、彩乃が何かと俺にくっついてくるから、付き合っているんじゃないかと聞かれたことは一度や二度じゃない。
そのたびに俺達は口を揃えてこう答えるのだ。
『ただの幼馴染』。
彩乃がはじめて写真部の部室に現れたときは、部員の驚き具合が半端なかった。
「雄大、お待たせ。帰ろっ!」
ザワザワッ……。
「おい木崎、おまえ、森口さんと付き合ってるの?」
先輩の一人が驚いて大声を張り上げると、ほかの部員も耳をダンボにして注目する。
俺達二人は「えっ?」と顔を見合わせて、「ちっ、違いますよ! 俺達は……」
「ただの幼馴染みです!」
綺麗に声をハモらせた。
そして唖然としている周囲をよそに、彩乃はいつもの調子で俺に話しかけてくる。
「雄大、真理子さんが帰りに牛乳とパンを買ってきてって。 今夜はクリームシチューだから」
「ええっ、 俺はビーフシチュー 派なのに」
「あっ、真理子さんからどっちがいいかってメールがきたから、クリームシチューって返事しておいた」
「マジか。 なんで俺の母親が息子じゃなくておまえに聞いてんだよ」
そう言いながら俺は机の上に置いていた鞄を手に取り、彩乃と並んでドアへと歩きだす。
「そりゃあ、真理子さんとの信頼関係の差じゃないの?」
「それこそ息子を信頼しなきゃ、おかしいだろ……あっ、お先に失礼します!」
ドアのところで俺が振り返って先輩にお辞儀をすると、隣の彩乃も俺にならってペコリと頭を下げる。
誰かが「若夫婦かっ!」と突っ込みを入れたのが聞こえてきた。
彩乃が「ふっ」と頬を緩ませ俺を見る。
「ふふっ、若夫婦だって。それじゃ私が『うちの夫がいつもお世話になっております』とか言って挨拶したほうがよかったのかな。菓子折り持って」
「アホか。そんなことしたら俺がおまえのファンに睨まれる。勘弁してくれ」
夫婦漫才みたいな会話をしながら部室を出ていく俺達を、みんなが呆気にとられて見送っている。
そんなとき、俺はほんの少しの優越感を感じていて……。
こんなの、どこからどう見ても俺達が付き合ってるって思うだろ?
だけど俺達は、本当にただの幼馴染で同級生で。
少なくとも俺にはそれ以上の気持ちがあったけれど、ずっとそれを言いだせずに居心地のいい関係を続けていたんだ。
俺達は学校でクラスは違うものの登下校が一緒だし、彩乃が何かと俺にくっついてくるから、付き合っているんじゃないかと聞かれたことは一度や二度じゃない。
そのたびに俺達は口を揃えてこう答えるのだ。
『ただの幼馴染』。
彩乃がはじめて写真部の部室に現れたときは、部員の驚き具合が半端なかった。
「雄大、お待たせ。帰ろっ!」
ザワザワッ……。
「おい木崎、おまえ、森口さんと付き合ってるの?」
先輩の一人が驚いて大声を張り上げると、ほかの部員も耳をダンボにして注目する。
俺達二人は「えっ?」と顔を見合わせて、「ちっ、違いますよ! 俺達は……」
「ただの幼馴染みです!」
綺麗に声をハモらせた。
そして唖然としている周囲をよそに、彩乃はいつもの調子で俺に話しかけてくる。
「雄大、真理子さんが帰りに牛乳とパンを買ってきてって。 今夜はクリームシチューだから」
「ええっ、 俺はビーフシチュー 派なのに」
「あっ、真理子さんからどっちがいいかってメールがきたから、クリームシチューって返事しておいた」
「マジか。 なんで俺の母親が息子じゃなくておまえに聞いてんだよ」
そう言いながら俺は机の上に置いていた鞄を手に取り、彩乃と並んでドアへと歩きだす。
「そりゃあ、真理子さんとの信頼関係の差じゃないの?」
「それこそ息子を信頼しなきゃ、おかしいだろ……あっ、お先に失礼します!」
ドアのところで俺が振り返って先輩にお辞儀をすると、隣の彩乃も俺にならってペコリと頭を下げる。
誰かが「若夫婦かっ!」と突っ込みを入れたのが聞こえてきた。
彩乃が「ふっ」と頬を緩ませ俺を見る。
「ふふっ、若夫婦だって。それじゃ私が『うちの夫がいつもお世話になっております』とか言って挨拶したほうがよかったのかな。菓子折り持って」
「アホか。そんなことしたら俺がおまえのファンに睨まれる。勘弁してくれ」
夫婦漫才みたいな会話をしながら部室を出ていく俺達を、みんなが呆気にとられて見送っている。
そんなとき、俺はほんの少しの優越感を感じていて……。
こんなの、どこからどう見ても俺達が付き合ってるって思うだろ?
だけど俺達は、本当にただの幼馴染で同級生で。
少なくとも俺にはそれ以上の気持ちがあったけれど、ずっとそれを言いだせずに居心地のいい関係を続けていたんだ。
