思い出さなければよかったのに

 昼前にチェックアウトを済ませると、俺達は俺が運転する車で東京へと戻ってきた。
 出発前の最後の夜は、実家でもホテルでもなく、二人のマンションで過ごそうと決めていたのだ。

 旅行中にスマホで撮った写真をパソコンに落として二人で見て、楽しかった一泊二日を語り合う。
 せっかくの旅行も、殆ど部屋に引き籠もってセックスしかしていなかったような気がするけれど。

「それはそれで、何年後かにはいい思い出話になるよね」
 彩乃がそう言って微笑んだ。

 帰宅途中にケーキ屋さんで引き取ってきたのは、四号サイズのイチゴのショートケーキ。
 ちゃんと俺が電話注文しておいたので、チョコプレートには『彩乃ちゃん、おたんじょうびおめでとう』と書かれている。

「彩乃()()()というところに悪意を感じるんですけど〜」

 俺がお揃いのマグカップに紅茶を淹れて運んできたら、口を尖らせた彩乃にジト目で見上げられた。

「いいだろ、若々しくて。清純派っぽいじゃん」
 ハハッと笑いながら彩乃の隣に座る。

「うわっ、四捨五入したら三十歳への嫌がらせ〜!」
「まだまだ若いって。清純派でオッケー」
「目が笑ってるんですけど〜」

「ハハッ、大丈夫。マジで彩乃は可愛いから」
「同情は結構です」
「同情じゃないよ……彩乃は誰よりも可愛いよ」

 俺が真面目な口調でそう言ったら、彩乃もハッとして真顔になった。

「本当だよ。彩乃は世界一可愛い。綺麗。最高の女。いつだってそう思ってる」
「雄大……」