――あ〜あ、お似合いだよな……。
俺があそこに立てていたら、今頃は彩乃にプロポーズできていたのだろうか。
アイツが欲しがっている言葉を躊躇なく言ってやれたんだろうか……。
考えたって仕方がない。俺は成瀬先輩じゃなくて、毎日食べ物相手に奮闘しているしがない会社員だ。
自分の仕事をことさら卑下する必要なんてないというのはわかっている。
フードフォトグラファーはそれなりにやり甲斐があるし、クライアントに喜んでもらえる立派な仕事だ。
写真に携われている。好きなカメラを手に汗をかき、シャッターを切っている。
それで十分じゃないかと思う。
だけど常に心のどこかで叫んでいるんだ。
――自分の写真を、『自分の作品』を撮りたい……。
若い頃に成し得ることなく、生活のために諦めた夢が、今も中途半端に燻り続けている。
目の前のテレビ画面には、夢を成し遂げた俺の恋人が、そしてかつて恋人に想いを告げた人物が、明るい光を浴びて映っている。
彼らに向かって切られるシャッター音。点滅するいくつもの閃光。
あのシャッター音は、フラッシュは、俺が彩乃に向けるはずのものだったんじゃないのか?
俺はまだ一度も自分のカメラで彩乃を撮れていないじゃないか……。
今日は受賞祝いで内輪のパーティーがあるらしく、彩乃のぶんの夕食はいらないと聞いている。
一人での食事に手を掛けたくもないから、俺はコンビニの弁当で済ませることにする。
それでも一応お祝いはしてやりたい。アイツが好きなダッツの抹茶アイスを買ってきて冷凍庫に入れておいた。
彩乃のことだ、夜中にこんなのを食べたら太ると文句を言いながらも、『だけど胃下垂だから大丈夫』とか言ってペロリと平らげてしまうんだろうな。
そんなことを考えながら、俺は思わず苦笑する。
――これじゃ俺は、ご主人様を待つ忠犬ハチ公だな。
俺が結婚したいと言ったら、きっと彩乃は喜んでくれるだろう。
いっそ結婚してしまえば踏ん切りがついて、こんな鬱々した気持ちも消えるかもしれない。
無駄な夢を諦められるかもしれない。
――それもいいかもしれないな……。
そこまで考えて、ブルブルと首を横に振った。
『喜んでくれるだろう』
『いっそ結婚してしまえば』
『踏ん切りがつく』
『諦める』
俺は何を言ってるんだ。
彩乃の大切な夢なのに。花嫁さんになりたいって言っていたのに。
俺が考えていることといえば、ネガティブな逃げの言葉ばかり。
俺は心から『結婚したい』と思えているか?
仕方なく結婚してアイツが本当に喜ぶのか?
アイツの夢を汚してどうするんだ!
恋人の大事な夢を自分の夢の墓場にしようとしている男が、本当に幸せになんてできるはずがないだろっ!
「くっそ〜……最低だ、俺」
俺があそこに立てていたら、今頃は彩乃にプロポーズできていたのだろうか。
アイツが欲しがっている言葉を躊躇なく言ってやれたんだろうか……。
考えたって仕方がない。俺は成瀬先輩じゃなくて、毎日食べ物相手に奮闘しているしがない会社員だ。
自分の仕事をことさら卑下する必要なんてないというのはわかっている。
フードフォトグラファーはそれなりにやり甲斐があるし、クライアントに喜んでもらえる立派な仕事だ。
写真に携われている。好きなカメラを手に汗をかき、シャッターを切っている。
それで十分じゃないかと思う。
だけど常に心のどこかで叫んでいるんだ。
――自分の写真を、『自分の作品』を撮りたい……。
若い頃に成し得ることなく、生活のために諦めた夢が、今も中途半端に燻り続けている。
目の前のテレビ画面には、夢を成し遂げた俺の恋人が、そしてかつて恋人に想いを告げた人物が、明るい光を浴びて映っている。
彼らに向かって切られるシャッター音。点滅するいくつもの閃光。
あのシャッター音は、フラッシュは、俺が彩乃に向けるはずのものだったんじゃないのか?
俺はまだ一度も自分のカメラで彩乃を撮れていないじゃないか……。
今日は受賞祝いで内輪のパーティーがあるらしく、彩乃のぶんの夕食はいらないと聞いている。
一人での食事に手を掛けたくもないから、俺はコンビニの弁当で済ませることにする。
それでも一応お祝いはしてやりたい。アイツが好きなダッツの抹茶アイスを買ってきて冷凍庫に入れておいた。
彩乃のことだ、夜中にこんなのを食べたら太ると文句を言いながらも、『だけど胃下垂だから大丈夫』とか言ってペロリと平らげてしまうんだろうな。
そんなことを考えながら、俺は思わず苦笑する。
――これじゃ俺は、ご主人様を待つ忠犬ハチ公だな。
俺が結婚したいと言ったら、きっと彩乃は喜んでくれるだろう。
いっそ結婚してしまえば踏ん切りがついて、こんな鬱々した気持ちも消えるかもしれない。
無駄な夢を諦められるかもしれない。
――それもいいかもしれないな……。
そこまで考えて、ブルブルと首を横に振った。
『喜んでくれるだろう』
『いっそ結婚してしまえば』
『踏ん切りがつく』
『諦める』
俺は何を言ってるんだ。
彩乃の大切な夢なのに。花嫁さんになりたいって言っていたのに。
俺が考えていることといえば、ネガティブな逃げの言葉ばかり。
俺は心から『結婚したい』と思えているか?
仕方なく結婚してアイツが本当に喜ぶのか?
アイツの夢を汚してどうするんだ!
恋人の大事な夢を自分の夢の墓場にしようとしている男が、本当に幸せになんてできるはずがないだろっ!
「くっそ〜……最低だ、俺」
