思い出さなければよかったのに

 そんな俺達がはじめて結ばれたのは、高二の冬休み。カレカノになってから一年三ヶ月後、新年を迎えてすぐのお正月のことだった。

 あの保健室でのディープキス以来、洋服の上からちょっとだけ胸も触らせてもらえるようになって、俺達の関係はほんの少しだけ進展していた。

 だけどそこで膠着状態。
 俺的にはその先も視野に入れていたけれど、童貞にはあまりにもハイレベルな領域で、簡単に『お願いします』とも言いづらく。

 ――タイミング的にはクリスマスか。

 だけどそれはどう考えても無理だった。
 クリスマスの日はいつも、両家一緒にフライドチキンとケーキを食べて過ごすことになっているのだ。

 毎年恒例の健全なクリスマスを過ごし、元旦の夜は夜勤だった明美さん以外の五人で近所の神社に参拝した。
 翌日は朝から父親の実家に行くことになっていたけれど、俺は風邪をひいて一人だけ家に残った。

 もちろん風邪だなんて大嘘だ。
 新年に父親の実家に行くのはわかっていたから、『その日は一人だけ家に残ることにする』と、前もって彩乃には伝えてある。

『親が出掛けた。くる?』
『行く』

 メッセージを送りあって、ほんの十分くらいで彩乃がきた。
 玄関の鍵をかけて、自分の部屋の鍵もかけて、ベッドに並んで座って、すぐにキスをする。

 その日の俺の頭の中はセックスのことばかりで、とにかく興奮していた。
 脳みそを沸騰させたまま、ひたすら長いあいだキスを繰り返す。
 もう慣れたディープキスをしながら白いセーターの裾から手を入れ、ブラジャー越しに胸に触れる。

 頭の中で何度もシミュレーションしたように彩乃をゆっくり押し倒したら、「ちょっと待って」と下から胸を押されて愕然とした。

 ――えっ、ここでまさかの拒絶⁉︎

 だけどそうではなかったようで、彩乃は「シャワーを浴びてくるね」と立ち上がる。
 最初からそのつもりでいたらしく、学校のスポーツバッグの中に勉強道具と一緒に着替えも入れて持ってきたのだという。

「わかった。そのあとで俺もシャワーする」
「うん」

 新年の真っ昼間。
 カーテンを閉めても薄っすらと光の差し込む六畳間のシングルベッドで、俺と彩乃は結ばれた。