思い出さなければよかったのに

 * * *

 パシャッ! パシャパシャッ! パシャッ!
 カシャカシャ! カシャッ!

『森口さん、成瀬さん、もう少し近づいていただけますか?』
『こっちに笑顔、お願いします!』

 パシャパシャパシャッ!

 目も眩むような無数のフラッシュ。
 点滅する光の中で、隣の彼女は完璧なモデルスマイルを浮かべている。

 ふと見ると、彩乃は左手の薬指を触っていて。
 僕の視線に気づいた彼女が僕を見て、ふっと妖艶に微笑んで。

 ――僕がもらえるのは、せいぜいこんな作り笑いなんだ。

 パシャッ! パシャパシャパシャッ!
 シャッターチャンスとばかりに一斉に焚かれるフラッシュ。

 ――みんな全然わかってないな。彼女の本当の笑顔は……最高の瞬間は……。


『えっ、だって、あんなお馬鹿、私以外に付き合い切れないじゃないですか〜。しょうがないから、私が彼女になってあげようかな……って』

『本当に好きなんだね』
『ふふっ……大好きですよ』

 パシャッ!


 まるで笑顔の呪いだな。
 高校時代のあの瞬間に囚われたまま、僕はずっと呪いから解けずに足掻いている。

 あの夏の日の一枚を超える写真を、僕は未だに撮れていない。


 Fin