思い出さなければよかったのに

 大盛況だった文化祭。
 話題の中心は僕の作品で、彼女の写真。

 写真部の展示の前、アイツがジッと一点を見つめていた。
 隣に並び、彼の視線の先を追う。

「この写真……どう思う?」
「……いい写真ですね」
「うん、僕の渾身の一枚」
「そうですか……」

「いい笑顔だろ?」
「最高の笑顔ですね……」

 そのまま立ち去りながら途中で振り向いたら、アイツはパネルを見上げたまま、その場でぼんやりと立ち尽くしていた。

 ――その笑顔は君のものだけどな!

 そんなこと、口が裂けても言ってやらないけど。

 これくらいの意地悪、いいだろう?
 だって君は既に本物の彼女の笑顔を手に入れている。
 何の努力もしなくたって、いつだってあの笑顔を見ることができるのだから。

 ――僕がどんなに足掻こうが、君には一生敵わないのだから。

 そんなふうに考えていたから、罰が当たったのかもしれない。
 彼は鮮やかな記憶を遺して彼女の前からいなくなり、同時に彼女の本物の笑顔も連れて逝ってしまったんだ。

 あの日のあの笑顔が忘れられなくて。
 もう一度あの笑顔を撮りたくて。
 追い掛けて追い掛けて……僕はまだ、全力で走り続けている。

 いつだって君の青春はアイツで、僕の青春は君だった。