思い出さなければよかったのに

 夏休みの終わり。
 僕の作品が『高校生フォトコンテスト』で金賞を受賞した。

『躍動感溢れる一瞬を見事に捉えた一枚』
『彼女の輝く笑顔と弾ける汗が、ダンスにかける青春そのものだ』
『まさしく『彼女の青春』』

 審査員に絶賛された作品のタイトルは、『彼女の青春』。
 僕は金賞を受賞したことを嬉しく思いながらも、心の底では苦々しくも感じていた。

 本来なら、この写真のタイトルは、『君の初恋』になるはずだった。

『ふふっ……大好きですよ』

 そう言いながら前髪を勢いよく掻き上げて、フルッと顔を振った瞬間に飛び散った飛沫(しぶき)と汗。

 太陽の光を弾きながらキラキラ輝いていたのは……。
 あれはまさしく、恋する彼女の最高の笑顔だった。

 夏休み中、ダンス部の練習を追い掛けて、ひたすら彩乃にくっついて……。
 何のことはない。結局僕が選んだ一枚は、ダンスなんかとは無関係の、恋する乙女の惚気(のろけ)る瞬間だった。

 彩乃は僕のカメラなんて見ていなかった。レンズの向こう側に木崎君の姿を思い浮かべていたんだ。

 ――彼女をあの笑顔にさせたのは……結局アイツだったんだ。

 悔しさと情けなさとプライドと。
 ギリギリまで悩んで迷って、結局僕はその写真に『君の青春』と名づけた。

 あの作品には、君の笑顔には、『初恋』のほうが相応(ふさわ)しい。

 わかっていたけど、アイツに彼女の気持ちを気づかせたくなかった。負けを認めたくなかった。
 だってあの作品は僕のもので、金賞を獲ったのは僕の作品で……。