ある日の休憩時間。
その日は気温が三十五度を超える猛暑で、ダンス部のメンバーは何度か休憩を挟んでは水分補給を繰り返していた。
焼けるようなグラウンドで全力で踊っているんだ。そりゃあ体力も消耗するだろう。
全員水筒持参で来ていたけれど、そんなものは昼過ぎには空っぽになってしまう。
向かう先は校舎脇にある手洗い場。
かくいう僕も、太陽の日差しをジリジリと浴びながらずっと写真を撮り続けていたものだから、背中にびっしょり汗をかいて、喉がカラカラに渇いていた。
ダンス部員のあとを追って手洗い場に向かう。
ダンス部は他の体育会系と同様、上下関係が厳しかったので、手洗い場を使用するのも先輩が優先。
一年生の彩乃は一番後ろに並んで水を飲む順番を待っていた。
ようやく迎えた彼女の順番。
僕が見ている前で、蛇口から出る水を両手で掬い、バシャッと勢いよく顔を洗う君。
――本当に全く化粧っ気がないんだな。なのにこんなに色が白いのか。
それにしても、大胆に顔を洗うなぁ。普通はもうちょっと恥ずかしがったり躊躇するもんじゃないの?
一応僕は男なんだけど。王子とか呼ばれてるんだけど。
――ほんっとーに全く意識されてないんだな。
なんだか胸にチリッと小さな焼け焦げができたような気がした。
「ねえ、木崎君のどこがそんなにいいの?」
「えっ?」
僕が話し掛けると、彩乃は水を掬う手を止めて、顔を上げた。
「……私、自分の気持ちを先輩に言ったことありましたっけ?」
「言ってないけど、丸わかりだから」
――いつも二人のことを見ているからね。
「えっ、恥ずかしい!」
「ハハッ」
「なのにアイツは全然気付いてないんですよね〜、鈍感すぎですよね!」
「鈍感なヤツが、そんなにいいの?」
「ふふっ、いいんです」
――いいのかよ。女心をわかってくれない察しの悪い男なんて、絶対に苦労するぞ。
胸の焼け焦げがメラメラッと大きくなる。
「……自分で自覚してる? 君、かなりモテてるよ。男なんて選び放題だよ。それでも木崎君がいいの? 彼のどこがそんなにいいわけ?」
いつの間にか問い詰めるような口調になっていた僕に、それでも彩乃は怒るでも困るでもなく、当然だというようにサラッと言ってのけた。
「えっ、だって、あんなお馬鹿、私以外に付き合い切れないじゃないですか〜。しょうがないから、私が彼女になってあげようかな……って」
――ああ……。
「本当に好きなんだね」
「ふふっ………大好きですよ」
前髪を勢いよく掻き上げて、フルッと顔を振って。
若く張りのある白い肌から弾かれた水滴が、周囲にパッと弾け飛んだ。
何の飾り気もない、純粋で光り輝く笑顔。
パシャッ!
思わずシャッターを切っていた。
その日は気温が三十五度を超える猛暑で、ダンス部のメンバーは何度か休憩を挟んでは水分補給を繰り返していた。
焼けるようなグラウンドで全力で踊っているんだ。そりゃあ体力も消耗するだろう。
全員水筒持参で来ていたけれど、そんなものは昼過ぎには空っぽになってしまう。
向かう先は校舎脇にある手洗い場。
かくいう僕も、太陽の日差しをジリジリと浴びながらずっと写真を撮り続けていたものだから、背中にびっしょり汗をかいて、喉がカラカラに渇いていた。
ダンス部員のあとを追って手洗い場に向かう。
ダンス部は他の体育会系と同様、上下関係が厳しかったので、手洗い場を使用するのも先輩が優先。
一年生の彩乃は一番後ろに並んで水を飲む順番を待っていた。
ようやく迎えた彼女の順番。
僕が見ている前で、蛇口から出る水を両手で掬い、バシャッと勢いよく顔を洗う君。
――本当に全く化粧っ気がないんだな。なのにこんなに色が白いのか。
それにしても、大胆に顔を洗うなぁ。普通はもうちょっと恥ずかしがったり躊躇するもんじゃないの?
一応僕は男なんだけど。王子とか呼ばれてるんだけど。
――ほんっとーに全く意識されてないんだな。
なんだか胸にチリッと小さな焼け焦げができたような気がした。
「ねえ、木崎君のどこがそんなにいいの?」
「えっ?」
僕が話し掛けると、彩乃は水を掬う手を止めて、顔を上げた。
「……私、自分の気持ちを先輩に言ったことありましたっけ?」
「言ってないけど、丸わかりだから」
――いつも二人のことを見ているからね。
「えっ、恥ずかしい!」
「ハハッ」
「なのにアイツは全然気付いてないんですよね〜、鈍感すぎですよね!」
「鈍感なヤツが、そんなにいいの?」
「ふふっ、いいんです」
――いいのかよ。女心をわかってくれない察しの悪い男なんて、絶対に苦労するぞ。
胸の焼け焦げがメラメラッと大きくなる。
「……自分で自覚してる? 君、かなりモテてるよ。男なんて選び放題だよ。それでも木崎君がいいの? 彼のどこがそんなにいいわけ?」
いつの間にか問い詰めるような口調になっていた僕に、それでも彩乃は怒るでも困るでもなく、当然だというようにサラッと言ってのけた。
「えっ、だって、あんなお馬鹿、私以外に付き合い切れないじゃないですか〜。しょうがないから、私が彼女になってあげようかな……って」
――ああ……。
「本当に好きなんだね」
「ふふっ………大好きですよ」
前髪を勢いよく掻き上げて、フルッと顔を振って。
若く張りのある白い肌から弾かれた水滴が、周囲にパッと弾け飛んだ。
何の飾り気もない、純粋で光り輝く笑顔。
パシャッ!
思わずシャッターを切っていた。
