思い出さなければよかったのに

 * * *

 パシャ! パシャパシャッ!

 ――うーん……何かが違う。

 高校生活最後の夏。
 彩乃とその幼馴染から堂々とお墨付きを貰った僕は、夏休みに入ると本格的にコンクール用の写真撮影に取り掛かった。

 ダンス部の練習時間に合わせて学校に行き、一緒にお弁当を食べ、同じ時間に帰宅する。
 まるでダンス部のメンバーになったかのような熱い夏がはじまった。

 愛用しているカメラはC社製。
 使い勝手のよさは勿論だけど、このパシャパシャという軽快な音が、フットワークの軽さをそのまま表現しているようで気に入っている。

「どうですか? 最高の一枚は撮れましたか?」

 お昼休憩の時間。
 体育館で円座になってお弁当を食べているダンス部メンバーに混じってアンパンを齧っていたら、隣に座っていた彩乃が首を傾げて聞いてきた。

「もうかなり撮りましたよね? 一枚くらいは美人の私が撮れてません?」
「うーん……どうだろう」

 撮れているといえば撮れている。
 本物のモデル並みの美少女。ダンスの躍動感。光る汗と笑顔。
 被写体としては最高の条件だ。

 僕が今回応募しようとしている『高校生フォトコンテスト』に関して言えば、彩乃を被写体に選んだのは大正解だと思っている。

 同じ学校の生徒という身近な存在をモデルに選んだ点は、高校生らしく背伸びをしていなくて、審査員に好印象を与えるだろう。
 それでいながら、彩乃には素人らしからぬ華があるから、嫌でも人目を惹く。

 ダンス部というのも旬でキャッチーだ。
 たくさんの応募作品の中から見つけてもらおうと思ったら、いかに注目されるかも大切な要素なのだ。

 もちろん大賞を獲れるのが一番の理想だが、優秀賞や審査員特別賞でも構わない。
 大会のホームページや受賞作の展示会で作品が飾られ注目されることが、次のステップに繋がるのだから。

 プロを目指しているのなら、先を読んで行動しなくてはならない。

 ――だけど、何かが……。

 何かが足りない気がする。
 今のままではただの『綺麗な写真』にすぎない。
 心に響くような『引っ掛かり』がないのだ。

 その『引っ掛かり』が何なのかがわからないまま、僕は日数と焦りと撮った写真の枚数だけを、どんどん積み重ねていった。