芋虫が蝶になる時


『高崎さんと■■さんって、顔立ちが似てるよね』

 その時は『似てませんよ』と誤魔化したけれど、あとになってから給湯室で同僚が亜由美と話しているのを聞いてしまった。

『どっちかというと■■さんって、高崎さんの劣化版みたいな感じだよね』

『高崎さんは理想的な顔だもの』

『■■さんって整形っぽいし、二人が知り合いなら高崎さんに寄せたんじゃない?』

『やだぁ、整形が本物に敵うはずがないのに。っていうか、憧れていたにしても、ここまでやる? 引くわぁ……』

 彼氏にも言われた。

『ごめん、別れよう』

『なんで? 私たち上手くいってたじゃない』

 突然の別れにショックを受けて縋ると、優しい人と思っていた彼は、私に目を合わさず言った。

『■■、整形なんだって? 俺、そういうのちょっと……』

 彼氏とは会社が違うし、同僚から話が漏れるとは思えない。

 誰が言ったのか分からないけれど、そう言われた瞬間、羞恥で何も考えられなくなった。

 私はその場から走って逃げ、そのあと彼氏から一切の連絡を拒絶された。





 その一か月後、亜由美と元彼が腕を組んで歩いているのを目撃してしまった。

 私と付き合っていたくせに、元彼は亜由美を見てデレデレした顔をしている。

 進行方向から二人がやってくるものだから、私はとっさに横道に逸れて鉢合わせるのを回避した。

 ――お願い。気づかずに通り過ぎて。

 この上なく惨めな気持ちになって祈っていた時、通り過ぎざま、亜由美が勝ち誇った顔をして私を見たのを目撃した。

 元彼は楽しそうに話して前を向いたままだったけれど、亜由美だけは私に気づいていた。

 彼女は私を見て優越感に浸った顔をしたあと、楽しそうに元彼に話しかけて去って行った。



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