芋虫が蝶になる時

「君は本当に綺麗な髪をしているよね」

 男性は私を椅子に座らせ、ブラシで丁寧に髪を梳く。

「そのすんなりとした手脚も、桜貝のような爪も、ちゃんと元通りになって良かったよ。君の美しさは俺の自慢だからね」

 そう言われても、見えないから自分の美醜なんて分からない。

 最初は芋虫同然でほぼ全裸だったけれど、手脚が生えたあとは、服を着せてもらっている。

 触った感じ、フリルやレースのついたワンピースみたいだけれど、これは私の趣味だったろうか。

 彼の趣味で着せているとしても、お世話になっているんだから、それぐらいどうって事はないけど。

「今日は最後に、デザートを食べよう」

 髪を梳かし終えたあと、男性は私を例のテーブルにつかせたあと、コトンと目の前に何かを置く。

 手探りすると、キンキンに冷えたガラスの器がある。

「口を開けて。冷たいよ」

 言われた通りにすると、口の中にコロンと丸い物が入れられた。

 口の中で溶かしていくと、ミルクの味がする。

 途中で膜のように張られていたミルクの層が壊れ、中からトロッとオレンジのソースが流れてきた。

 ――美味しい。

 うっとりとして、極上のアイスデザートを味わうと、もう一つが与えられた。

 それもじっくり味わって食べ終えたあと、私は口を開いて続きを求める。

「ああ、ごめんね。これは双つしかないんだ」

 笑い混じりに言ったあと、男性は私の後ろに回り、目元に何かを巻き付けてきた。

「急に光を感じると混乱するからね、先にこうしておこう」

 彼はグルグルと私の目元に何かを巻き付け、頭の後ろでギュッと結ぶ。

「じゃあ、今日はもうベッドで休んでおいで。今日でもう点滴は終わりだよ」

 彼は私を抱き上げ、ベッドまで連れて行って横たえる。

 そのあと腕が生えたあとはそこに刺していた点滴を抜き、脱脂綿を当ててテープを貼った。

「おやすみ」

 男性はそう言ったあと、部屋を出て行った。





 次に目覚めると、目が見えるようになっていた。



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