『真剣に準備すればするほど期待は大きくなるし、失敗がこわくなる。不安になるし、緊張もする。だけど、成功したときに心から喜べるし、失敗したときは泣きたいほど悔しくなれるんだ』
字幕を目で追いきったタイミングで、体のなかを音が流れていく。電車の振動音は座面から、耳慣れた軽快なメロディはイヤホンから。ああ、ベア太郎最高だな。胸のなかで噛みしめるうち、片手で構えたスマートフォンの画面上で、赤いクマにしか見えない妖精――ベア太郎が踊りだす。こんな幅では足りないとばかりに前後左右に見切れながら。
俺はエンディングまできっちり見る派だが、電車の速度が落ちるほうが先だった。
ち、と軽い舌打ちが漏れる。あと少しだったのに。動画を停止させ、イヤホンを耳から外す。走行音、アナウンス、乗客の小声……一気に音が流れ込み、現実の世界へと意識が引っ張られていく。
ネックウォーマーに顎を沈めたまま息を吐き出せば、電車の揺れとは異なる空気の揺れを頭上で感じた。笑われた?
パッと顔を上げるが、目の前に立っていたであろう黒いダウンジャケットを着たやつは、素早くドア際へと移動していた。顔は見えなかったし、ただ降りるために移動したと考えるのが普通だけど。
胸のざわつきとともに、何度と言われた言葉が蘇る。
――その顔で、そんな可愛いアニメ観るんだ。
心の声なんて聞こえないのだから、気にしないほうがいい。
記憶を振り払うように立ち上がり、開いたばかりのドアへと歩く。
冷たい風が頬を撫で、暖房に緩んだ体がきゅっと引き締まる。自分に向けられた視線なんて忘れてしまおう。
俺はこれから誰からも愛されるベア太郎になるのだから。
字幕を目で追いきったタイミングで、体のなかを音が流れていく。電車の振動音は座面から、耳慣れた軽快なメロディはイヤホンから。ああ、ベア太郎最高だな。胸のなかで噛みしめるうち、片手で構えたスマートフォンの画面上で、赤いクマにしか見えない妖精――ベア太郎が踊りだす。こんな幅では足りないとばかりに前後左右に見切れながら。
俺はエンディングまできっちり見る派だが、電車の速度が落ちるほうが先だった。
ち、と軽い舌打ちが漏れる。あと少しだったのに。動画を停止させ、イヤホンを耳から外す。走行音、アナウンス、乗客の小声……一気に音が流れ込み、現実の世界へと意識が引っ張られていく。
ネックウォーマーに顎を沈めたまま息を吐き出せば、電車の揺れとは異なる空気の揺れを頭上で感じた。笑われた?
パッと顔を上げるが、目の前に立っていたであろう黒いダウンジャケットを着たやつは、素早くドア際へと移動していた。顔は見えなかったし、ただ降りるために移動したと考えるのが普通だけど。
胸のざわつきとともに、何度と言われた言葉が蘇る。
――その顔で、そんな可愛いアニメ観るんだ。
心の声なんて聞こえないのだから、気にしないほうがいい。
記憶を振り払うように立ち上がり、開いたばかりのドアへと歩く。
冷たい風が頬を撫で、暖房に緩んだ体がきゅっと引き締まる。自分に向けられた視線なんて忘れてしまおう。
俺はこれから誰からも愛されるベア太郎になるのだから。



