波打ち際のチョコレート


三つの変化

一つ、去年のこの街の天気は辛かった。
毎日曠々と曇り空が広がり、気分も沈みがちだった。
でも今は、この街を離れる。もうこの街で、一人で生きていける力がなくなっていた。
だから、もうすぐ帰国する。あれだけ好きだったこのまちで、一応の仕事も見つかっていたのに。どうしても心が追いついていなかった。
あの頃の情熱も、やる気も、ワクワク感も、全て失っていた。

二つ、自分と他人の境界線が、少しわかってきた。
自分を保ったまま、他人と関わる術を学んだ。
男性と女性の違い、その本質的な隔たりも、痛みと引き換えに理解した。

三つ、彼の国の言葉はもっと上達した。毎日、歯を食いしばって続けている。
私は、自分を愛せる。
あなたは私に、深い安心感を与えてくれた。
あなたは私の「最高(best)」じゃないけど、私の「唯一(only one)」。
私はまだあなたの「唯一」じゃないけど、あなたの唯一でありたい。
それ以外に、最高なんてない。
本当に、あなたと一緒にいたい。
だから、あなたを変えようとするのは、もうやめる。
何かを変えたい時、人を変えるんじゃなくて、状況そのものを変えないといけない。
状況を変えて、それが人に影響を及ぼし、変化を促していく。
人を直接変えようとするのはコントロールで、それは私たちの親がしてきたことと同じだ。
互いに、そんな行動にはアレルギーを持っている私たちだ。
人生で人は変わる、成長する。
あなたがどう成長するか、ただ見ていたい。
あなたはあなたのままで、完成している。
私は私のままで、完成している。
でも、一緒なら、もっと高みに行けるはずだった。


家族との絆

できれば、できるだけあなたの家族に、会いたかった。
ずっと謝りたかった。
あの時、彼らと正面から話すべきじゃなかった。
彼に「この街に来て」と、無理な意地を張るんじゃなかった。
聞けなくて、ごめんなさい。
話せない自分で、ごめんなさい。
今、あなたの国言葉は少し上手くなりました。
もっとあなたたちのことを知りたいです。
どうか、もっと私のことも知って欲しいです。




心をあなたに送りすぎて、戻り道を失いかけていた。
でも今は、少しずつ取り戻している。
世界の果てに飛ばした心は、帰り道を忘れかけた。
私も、心が満たされるような仕事をしよう。
自分を取り戻せば取り戻すほど、ワクワクすることが増えてくる。
そして、ふとあなたが頭に浮かぶ。
共有したくなる。伝えたくなる。
話せる時に話さず、距離を取って考えたのが、一番の間違い。
聞くべき時に、聞けなかった。
混乱して言葉にならない時に無理に話して、あなたを傷つけた。
ずっと間違ってばかりで、あなたを失った。
でもあなたは、私の最高の親友だった。
彼氏と彼女になる前も、それ以上に、私たちは何でも話せる相手だった。
だからあなたといられなくて、すごく寂しい。
あなたの声が、すごく恋しい。
あなたが話しかけると、私は距離を取って考えた。
聞くべき時に、聞けなかった。
パニックで頭が真っ白な時に、話しすぎてあなたを傷つけた。
これが、私の大きな間違い。


届かない想い

毎日あなたを想う時、「私なんてどうでもいいんだ」と、自分に言い聞かせる。
そんな日々は、嫌で仕方ない。
でも今の私には、あなたを幸せにできない。
遠すぎる。
彼がどうしてるかなって、考えてしまう。
でも、私の心配が、あなたを弱くするだけだ。強くなれない。
だから、君は離れて行った。


三ヶ月半

三ヶ月半が経った。
「連絡を絶って」と言われて、少しホッとしたのが一ヶ月前。
あなたに連絡しないよう、最善を尽くした。
でもそれでも、毎日、毎晩、「私たち」という存在を恋しく思う。
あなたが今何をしてるかなんて、考えない。
ただ、もしあなたがここにいたら、ただ何かを共有できたら、それがどんな感じかだけを考える。
あなたがふと頭に浮かぶ。
最初はその存在感が強くて、胸が張り裂けそうになる。
それから少しずつ、時が経つにつれて、私たちがもう存在しないという、諦めと理解とともに、その姿は薄らいでいく。


第二の誓い

愛されなくても。
愛されない時も。
愛する覚悟を持ち続ける。
いつか、忘れる日が来るのだろうか。
忘れられる自分を想像することはできる。
愛されない未来を想像することもできる。
でも、忘れる日も、愛せなくなる日も、来ることは想像できない。
死の直前、最後に会いたいのは誰か?
選択肢なんて、最初からなかった。
世界が何と言おうと、私は彼のそばにいたかった。
本当は、もうすでに君の時間で過ごし始めていたなんて、言えないや。
あなたは別れた時、「短期の痛みは、長期の痛みよりマシ」と言った。
それがいつ、「短期の痛み」になるのだろう。
これは、喜びの一切ない痛みだ。
ただ私の人生に、穴が空いているだけ。


彼のいない世界

今、私は彼のいない世界にいるような気がする。
そしてその世界は、私の血管の中で真っ黒で、冷たい。
緊張して、寒くて、震える。
彼は、ただ私の世界にいるだけで、それだけで十分だった。
自分が存在しない世界について考えたことはあった。
でも、私の世界に彼がいない世界について考えたことは、一度もなかった。
真っ暗だ。


唯一という幻想

私をあなたより大切にしてくれる人は、他にもいると思う。
でも、将来を一緒に考えられるのは、あなただけだった。
そしてそれが、私にとっての最高の未来だった。
大切なのは、あなたが誰を愛したかという歴史じゃない。
どう向き合えなかったか、という歴史。
映画は信じない。
私の男は、あんなロマンチックな言葉を喋らない。
いつも一言だけの返事。
彼は私のものじゃない。
彼は私と一緒じゃない場所で、成長している。
でも、私は彼が私のもとに戻ってくると、どこかで信じている。
男の子という存在
男の子って、現実が見えていないのに、なのにヒーローになろうとする。
そばにいてくれているのか、それともそばに縋りついているのか。
彼は20代という時間を、悲しみを私と共有せずに、一人で生きると決めた。
彼とのことを全部、無かったことにする勇気なんて、私にはなかった。
でも、それは勇気なんかじゃなくて、向き合うことを決めたってことだと思いたい。
君とシェアしていたことを、持ちきれなくて、他の子に伝えてしまう。
一番伝えたいのは君なのに。
私の想いが、分散していく。
君の中だけで、完結していたかったのに。
私が勝ち、彼が負けた。
物語は、終わったのだ。


未来の自分への問い

まだどこかで、1年後か2年後かに彼の国で働くことを考えている自分がいる。
また誰かを好きになるのかな。
彼より大事に扱ってくれる人は、いるだろう。
彼ほど忍耐強く、私の煩わしさと向き合ってくれる人は、いるだろうか。
多分、私は他の女の子たちと同じように、彼の心の引き出しに仕舞われるだろう。
私は最後の彼女じゃなかった。
彼は私の初恋で、彼が最後の恋人じゃなかった。
今の彼と結婚する準備は、私にはできていなかった。
向き合えない人と。
ノーと言えない人と。
他人を理由にして、逃げる人と。
一緒にはなれない。
だから、よかったのかもしれない。
突然の感情に襲われることはあっても、解放されたとも感じる。
存在しない未来を追い求めることから、私を解放してくれてありがとう。
実際は、これでいいんだといい聞かせる。
キャリアと人生を、自分の力で追求できる。
彼を捨てる準備も、心のどこかでできていた。


嫌いなところ

彼の言葉遣いが嫌い。
熱意のない、温度差のある関係が嫌い。
計画性のない、行き当たりばったりなやり方が嫌い。
説明しない、黙ってやり過ごすのが嫌い。
物事に向き合えず、「ノー」と言えない弱さが嫌い。
すべてが私をイライラさせ、自尊心を傷つけた。
だから、さようなら。


「私」を失う喪失感

間違っていた。関係の中の「私」という存在が、幻想だった。
誰かが言ってた。別れる時は憔悴するのは、愛する人を失うからだけじゃない。
愛した自分、愛された自分をも失うからだ。
あなたなしでは、「私」は私じゃない。
その喪失が、一番大きい。
そんな思いも、私のあなたへの愛が、あなたの私への愛より大きかったからなのかもしれない。
あなたの愛が育つと期待していたけど、実際は、自分をもっと愛せるようになっていた。
私は愛とは何かを知り始めたばかりみたいだ。
自分で自分を愛する練習をする。
そうすれば、他人に愛を求めなくなるから。