「え……っ? ……な、何……?」
紫乃は混乱し、汀家の両親、龍之介、瑛も何が起こっているのか理解していない。
隼人は立ちあがると、紫乃に「君はここにいて」と制し、燕谷と葛に彼女を守らせる。
そしてゆっくりと壁に押さえつけられたままの菖蒲に歩み寄り、低い声で尋ねた。
「……いい加減、正体を見せたらどうだ? 鴉」
その瞬間、菖蒲は目を赤く光らせ、男の声で哄笑し始めた。
「ははははははははははっ!! さすがですねぇ! さすが、侯爵閣下がお二人もいると、バレてしまいますかぁ!」
その軽薄な声を聞き、葛が表情を強張らせた。
彼の僅かな反応を見て、菖蒲はニタリと笑って声を上げた。
「クズさーん! お久しぶりでーす! あなたが憎悪する丸尾ですよ~!」
紫乃はハッとして葛を諫めようとしたが、分かりやすく煽られた彼は逆に冷静になったようだ。
葛は「大丈夫です」と一言告げたあと、紫乃を守るために前に出た。
「菖蒲……っ、どうしたの!?」
「近づくな! 母上!」
寧々は娘を心配して駆け寄ろうとしたが、龍之介に止められる。
「あはははははは! あなた方の大切な娘さんは、かなり前に心を壊してしまっていますよ。大好きな大好きな、上水流貴人さんに婚約破棄されて、嫉妬の塊になった頃からかなぁ~? でも、その前からあなた達はこのお嬢さんを、我が儘放題に育てていたから、娘の変化にも気づかなかったでしょう。親の怠慢ですよ。だからこうなっても、文句が言えないんです」
丸尾――、〝神無月の鴉〟の白面に煽られ、高次は歯噛みしている。
その時、葵が言った。
「ろくでなし、恨むのやったら自分とわたくしを恨みなさい。紫乃を粗末に扱うてきたあんさんらの娘が、わたくしの生家へ嫁ぐやなんて、あり得るはずもあらしまへん。貴人には菖蒲の〝為人〟をきちんと伝え、『もっと相応しい女性がおります』と言うて、気立てのええお嬢さんをご紹介しました。貴人は今、幸せな新婚生活を送っておいでです。……せやけど、菖蒲が心を壊した理由が婚約破棄にあるのやとしたら、わたくしにも一因はありましょう。けど、そうなるまで娘を歪ませた、自分たちにも責があると思いなさい」
「この疫病神……っ!」
寧々が泣き崩れ、ティーカップを床に叩きつける。
「ハクト」
菖蒲の前に立った隼人が白虎を呼び、それに応じてフワリと成獣の姿のハクトが現れた。
「彼女の指輪を」
主人に命じられ、ハクトは青い目で菖蒲が嵌めている赤い石の嵌まった指輪を見つめた。
「ぐ……っ!?」
その瞬間、菖蒲の表情が苦悶に歪んだ。
紫乃は混乱し、汀家の両親、龍之介、瑛も何が起こっているのか理解していない。
隼人は立ちあがると、紫乃に「君はここにいて」と制し、燕谷と葛に彼女を守らせる。
そしてゆっくりと壁に押さえつけられたままの菖蒲に歩み寄り、低い声で尋ねた。
「……いい加減、正体を見せたらどうだ? 鴉」
その瞬間、菖蒲は目を赤く光らせ、男の声で哄笑し始めた。
「ははははははははははっ!! さすがですねぇ! さすが、侯爵閣下がお二人もいると、バレてしまいますかぁ!」
その軽薄な声を聞き、葛が表情を強張らせた。
彼の僅かな反応を見て、菖蒲はニタリと笑って声を上げた。
「クズさーん! お久しぶりでーす! あなたが憎悪する丸尾ですよ~!」
紫乃はハッとして葛を諫めようとしたが、分かりやすく煽られた彼は逆に冷静になったようだ。
葛は「大丈夫です」と一言告げたあと、紫乃を守るために前に出た。
「菖蒲……っ、どうしたの!?」
「近づくな! 母上!」
寧々は娘を心配して駆け寄ろうとしたが、龍之介に止められる。
「あはははははは! あなた方の大切な娘さんは、かなり前に心を壊してしまっていますよ。大好きな大好きな、上水流貴人さんに婚約破棄されて、嫉妬の塊になった頃からかなぁ~? でも、その前からあなた達はこのお嬢さんを、我が儘放題に育てていたから、娘の変化にも気づかなかったでしょう。親の怠慢ですよ。だからこうなっても、文句が言えないんです」
丸尾――、〝神無月の鴉〟の白面に煽られ、高次は歯噛みしている。
その時、葵が言った。
「ろくでなし、恨むのやったら自分とわたくしを恨みなさい。紫乃を粗末に扱うてきたあんさんらの娘が、わたくしの生家へ嫁ぐやなんて、あり得るはずもあらしまへん。貴人には菖蒲の〝為人〟をきちんと伝え、『もっと相応しい女性がおります』と言うて、気立てのええお嬢さんをご紹介しました。貴人は今、幸せな新婚生活を送っておいでです。……せやけど、菖蒲が心を壊した理由が婚約破棄にあるのやとしたら、わたくしにも一因はありましょう。けど、そうなるまで娘を歪ませた、自分たちにも責があると思いなさい」
「この疫病神……っ!」
寧々が泣き崩れ、ティーカップを床に叩きつける。
「ハクト」
菖蒲の前に立った隼人が白虎を呼び、それに応じてフワリと成獣の姿のハクトが現れた。
「彼女の指輪を」
主人に命じられ、ハクトは青い目で菖蒲が嵌めている赤い石の嵌まった指輪を見つめた。
「ぐ……っ!?」
その瞬間、菖蒲の表情が苦悶に歪んだ。



