役立たずの身代わり令嬢と、孤独な白虎の侯爵

 ある日の夜。

「旦那様、水流迫(つるざこ)家からお手紙がございます」

 (かずら)に手紙を渡され、ソファに座って本を読んでいた隼人(はやと)は「おや、珍しいな」と眉を上げる。

 西の水流迫家は青龍を使役する侯爵家で、東西会わせて八大侯爵家と言われている仲で、年に数回顔を合わせる事はある。

 だがそれ以上の関係はなく、このたび菖蒲(あやめ)と結婚式を挙げるにあたって、八大侯爵家の仲という事で招待状を出した。

 祝いの言葉だろうと思って手紙を開けようとしたが、西洋式の封蝋には特別なまじないが掛かっているのに気づく。

 青龍を使役する当主が、白虎を使役する隼人にしか開けられない術をかけたのだ。

「……内密の話か……。ハクト」

 白虎を呼ぶと、小さなハクトがフワッと現れ、主人が差しだした手紙にポンと肉球を押しつけた。

 すると封蝋で閉じられていた部分がパカリと開き、隼人は中に入っている便箋を出す。

 隼人は水流迫家の当主からの手紙を読み、溜め息をついたあと、もう一度頭から読み直す。

「……なるほどな……」

 それから彼は深い溜め息をつき、両足をオットマンにのせて呟いた。

「本当に、運命というものは分からないものだ」



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